掲載日:2020/02/10  更新:2020/02/20

2020に向けてトレーナーができること guest▼ 田中礼人さん

公益財団法人日本卓球協会 男子ナショナルチーム ストレングス&コンディショニングコーチ。
資格にCSCS、NSCA-CPT、NSCAジャパン認定検定員、NSCAジャパン南関東地域ディレクター。

guest▼ 田中礼人さん

公益財団法人日本卓球協会 男子ナショナルチーム ストレングス&コンディショニングコーチ。
資格にCSCS、NSCA-CPT、NSCAジャパン認定検定員、NSCAジャパン南関東地域ディレクター。

日本のトップトレーナーからリレー形式で提言いただく。今回は、近年目覚ましい活躍を見せる卓球競技で9年前から代表選手たちをサポートしてきている田中礼人さんからの提言。

選手育成システムの構築

近年、日本の若手卓球選手の活躍が目覚ましい。田中礼人さんは、2010年に男子ナショナルチームのストレングス&コンディショニングコーチとなり、ナショナルトレーニングセンターを拠点に選手たちの躍進を支えてきている。
 最近特に目を見張るのが、10代選手の活躍である。女子では、2018年1月の全日本選手権で、女子シングルス、女子ダブルス、混合ダブルスを制して、史上最年少の3冠を達成した伊藤美誠選手(17)、2017年6月の世界卓球シングルスのメダルを獲得した平野美宇選手(17)。この両選手とともに、黄金世代の一翼を担う存在の早田ひな選手(16)。そして男子では、史上最年少で世界ベスト8に入った張本智和選手(13)がいる。
 この若手選手の強さの要因として、田中礼人さんは、日本卓球協会が2001年からスタートした選手育成・指導者養成事業を挙げる。
「将来有望な小学生世代の選手を各県から集めて『ホープスナショナルチーム』として、年に数回合宿を行いながら、最新の卓球技術とともに、体力やメンタル、栄養について学べる機会をつくっています。同時に、指導者養成事業もスタートし、選手が所属チームに戻っている間も、共通認識のもとに練習や身体づくりができる環境を整えています。現在日本男子卓球界のエース水谷選手はその1期生。当時6年生です。水谷選手は高校2年生で、全日本選手権男子シングルスで初優勝して以来、12年連続での決勝進出、9度の優勝、リオ五輪では銅メダル獲得と、安定した強さを見せています。ナショナルチームの強化選手として選ばれると、年間300日以上の合宿や海外遠征などを供にしますが、最近選ばれる選手たちはウォーミングアップやクールダウンは当然のように行い、国際試合の遠征先でも、体力維持や強化、及びコンディション調整のためのトレーニングを自ら行う姿が見られます」

▶発育発達に応じたトレーニングが勝敗を分ける

卓球選手の若年層化が進み、小さいころから卓球に打ち込む子どもも増えている。現在活躍する選手たちも、2~3歳から始めているというケースも少なくない。親御さんが卓球をしていたり、身近に卓球の練習ができる環境があったり、自宅に卓球台があるという選手もいる。
 そこで田中さんは、特に小学生選手のトレーニングには、敢えて遊びの要素を多くして、様々な動きに対応できるようにしている。体操のマット運動や、ボールを投げたり蹴ったり、一見卓球とは関係ないように見える遊びが、将来の柔軟な身のこなしをつくっていく。
 その後も成長段階ごとに伸びる体力要素に合わせたトレーニングを入れていく。身長の伸びが止まってからは、ウエイトトレーニングでも、かなり負荷をかけていく。卓球ボールの軽さを考えるとそれほど筋力は必要にならないイメージがあるが、世界の舞台では左右のフットワークのスピードや安定感、スマッシュなどでパワーの違いが勝敗を分けるようになってきている。
 田中さんがコーチとして着任した当時は、トップ選手でもスクワットなど基本トレーニングをやったことがない選手も多くいたという。2001年からの日本卓球協会の指導者養成事業がスタートする以前は、指導者の間でも技術志向が高く、「①技術、➁メンタル、➂体力」という順で重視され、「体力がなくても勝てる」という風潮さえあったという。今では監督や技術コーチも体力の重要性を選手たちに伝えているという。

▶トレーナーとしてできること

田中さんがトレーナーとして大切にしていることは、「原理原則」。本質を見極めて、継続することを重視する。卓球競技は技術力を高めるためには、質の高い練習を行うことが重要となる。その質の高い練習を十分に行うために、ケガ予防と、高いパフォーマンスを支えるストレングス&コンディショニングトレーニングの質も大切だ。田中さんはこのトレーニングの質を追求するために、練習のスケジュールを変えてもらうこともある。以前は練習を優先して、いつも練習後にトレーニングの時間が置かれていたが、練習後だと、同一方向への何百回もの回旋運動の後では、トレーニングフォームがどうしても崩れてしまう。フォームが崩れがちな状況では効果的なトレーニングができない。これを監督と相談し、トレーニングだけの日を確保することでトレーニングの質も高まり、選手達のパフォーマンス向上にも繋がった。
 2018年10月、卓球の「Tリーグ」が開幕した。2020年東京五輪では、日本選手のメダルラッシュが期待されている。近年の若手選手の躍進に、卓球教室も急増しており、日本は卓球ブームに沸き始めている。幼少期から心技体をバランス良く鍛え、トレーニングや栄養、休養についても科学的に取り組んできた卓球選手たちがお手本となり、今後指導者としても活躍できる場が広がることは、日本の健康スポーツ市場にとってもいい影響が広がる。田中さんのもとで、トレーニングや身体づくりの「原理原則」を学んだ選手たちが世界のフィールドで益々活躍し、指導者となり、彼らのもとで、長く卓球を楽しむ人が増えていくに違いない。

11 件中 1-11

  • 1

新着

同じカテゴリの記事