掲載日:2020年08月31日  更新:2020年09月02日

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アフターコロナの、フリー指導者における課題と対応【1】

フリーインストラクター・トレーナーの中でも、民間フィットネスクラブを主な仕事場としているグループレッスン指導者が、今回最も大きい影響を受けたが、活動自粛期間中に、アフターコロナを見据えて新たな挑戦を始めた指導者も多い。特に、世界的な外出自粛でオンラインフィットネスが急速に浸透しつつあり、指導者にとっては新たなチャンスも見え始めている。

 クラブが営業を再開し、7月以降はスタジオスケジュールも例年通りに近づいていくことが予想される中、FIAガイドラインに対応しながらも、スタジオレッスンの集客力を保ちつつ、オンラインレッスン対応をはじめ、新たな収入源の確保が、フリー指導者の主な課題となっている。アフターコロナのフィットネスへの対応について、業界リーダーに訊いた。

感染予防と、スタジオレッスンの安全確保
マスク着用による感染予防と、呼吸を確保しながら熱中症予防

 民間クラブのスタジオレッスンが再開しているが、現状では感染予防のためのFIAガイドラインの遵守がインストラクターとしての業務上の責任ともなっており、インストラクターも参加者もマスクを着用したままレッスンが行われている。
 尾陰由美子さんは、フィットネス指導専門家として、マスクをしたままの運動の熱中症リスクを懸念し、6月28日(日)に「『マスク問題を語る』座談会」をzoomで開催。民間クラブ、高齢者施設、医療現場などでの運動指導に携わる指導者や、運動生理学の大学教授によるオンライン座談会に、220人が視聴者として参加し、その後もFacebook liveなどでの再生回数は4,000を超えており、その注目度の高さが分かる。
 対談では、運動時には、本来血管が広がらなければならないが、マスクにより低酸素となることから交感神経が高まり、血管が締まって血圧が高くなるリスクがあることが指摘された。マスクをすることで、心拍数が低くても血圧が高まるリスクもあるという。特にスタジオ利用者に多い中高齢者でリスクが高い。
 熱中症については、学校体育などでは「熱中症予防のためのガイドライン」として、温度と湿度の指数がだされており、特に湿度への注意が必要だという。マスクをしていることで、顔周辺の湿度が高まることによるリスクも指摘された。地域によっても、湿度が違うことから、特に大手チェーンなどで一律のガイドラインで運営することにも注意が必要だ。
 だからといって、マスク着用は、FIAガイドラインに明記されており、もしマスクをしていないレッスンで感染者が確認されれば、レッスンはもとより、ジム・スタジオに営業停止要請が出される可能性もあり、自分たちの首を絞めることに繋がりかねない。参加者にとっても意識に差があり、当面はマスク着用が原則になりそうだ。
 ジム・スタジオによっては、インストラクターに任意での判断を任せているところも出てきているが、スタジオの換気や空調、参加者の人数制限によるソーシャルディスタンスの確保をしたうえで、お客さまとの対話を大切に、マスクの効果やリスクも含めて共有し、参加者が安心できる環境づくりをしているのが現状となっている。グループレッスン指導者は、参加者一人ひとりの気持ちに寄り添いながら、安全と安心が両立できるコミュニケーションがとれることも、今後求められる。
 また、熱中症については、初期症状として、フラつきや集中力や判断力が低下することによる動きの反応低下などが見られることから、転倒のリスクも含め、参加者の様子や動きに普段以上に気を配っておく必要がある。
 同座談会を企画運営した尾陰さんは、「スタジオレッスンでの熱中症以外にも、マスクを普段から着用し続けていることで、呼吸が浅くなっている方が多く、胸郭の動きが小さくなることで、肩こりや頭痛などの機能不全を抱える人が増えている」とも指摘する。こうした機能改善のためにパーソナルトレーニングを受ける人も増えており、今後、スタジオレッスンの内容や、スタジオ以外でのフィットネス指導内容、提供方法も検討が必要となっている。
 WHOや厚労省、スポーツ庁からも、コロナ感染者の推移と、気候の変化にも合わせて、新たなガイドラインが発表されるようになってきている。FIAガイドラインも改訂プロジェクトがスタートするという。マスク問題については、まだしばらく議論が続きそうだ。

感染予防と、スタジオの体験価値

 営業再開を楽しみにしていたメンバーが、スタジオレッスンにいち早く戻ってきたものの、感染予防ガイドラインにより、様々なストレスを与えてしまっていることも懸念されている。スタジオでの高い体験価値を提供することが求められるフリー指導者は、お客さまの気持ちに寄り添いつつ、クラブスタッフとも連携して、よりよいスタジオ体験を提供する工夫に迫られている。
 前述のマスク着用により、インストラクターの表情や口元が見えず、指導者の声が聞こえにくいことにストレスを感じている参加者も多い。換気のために、窓やドアを開けている場合、外からの雑音も交じる。スタジオ外への音漏れの問題から、マイクや音量も抑えているスタジオも多く、特に高齢者にとっては声や音の聞きづらさが気になっているようだ。
 また、換気の観点から、スタジオの時間が短縮されるとともに、マスク着用による熱中症予防として運動強度も低めに設定しており、スタジオレッスンへのニーズが高い有酸素運動の効果は提供しにくい環境が続く。
 また、飛沫感染予防のソーシャルディスタンス維持のために、インストラクターも動く範囲が決められており、対面指導ではなく背面指導が原則となっている。メンバーとのコミュニケーションも鏡越しとなり、掛け声もハイタッチも禁止。グループレッスンならではのコミュニケーションも楽しみにくくなっている。
 営業再開を楽しみにしていたメンバーにとっては、期待していた体験価値を感じることができず、この状況が続けば、運動継続のモチベーションがなくなりかねない。特に中高強度の有酸素系レッスンを担当しているインストラクターは、今後、オンラインレッスンやアウトドアでのレッスンなど、新たな環境での指導機会を見出すことも必要になりそうだ。

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