掲載日:2020年08月31日  更新:2020年09月04日

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アフターコロナの、フリー指導者における課題と対応【2】

フリーインストラクター・トレーナーの中でも、民間フィットネスクラブを主な仕事場としているグループレッスン指導者が、今回最も大きい影響を受けたが、活動自粛期間中に、アフターコロナを見据えて新たな挑戦を始めた指導者も多い。特に、世界的な外出自粛でオンラインフィットネスが急速に浸透しつつあり、指導者にとっては新たなチャンスも見え始めている。

オンラインフィットネスを、新たな活躍の場にするために
オンラインフィットネス指導を始めるにあたって知っておくべきこと

 緊急事態宣言中の外出自粛から、生活全般にリモートサービスが浸透し、6月に入って、オンラインフィットネスも多種多様なサービスが立ち上がっている。その中で、フリー指導者として、オンラインサービスにどのように関わっていけばいいのか。
 4月からインストラクター向けに、「オンライン講座のつくり方」(1回2時間半×6回シリーズ)を運営している三浦栄紀さんは、こう話す。「オンラインレッスンでも稼ぎたいと思ったら、まず知っておくべきことは、オンラインでのお客さまは基本的には『見ない、聞かない、信じない』と認識しておくことです。オンラインの動画コンテンツ市場に参入するということは、ある意味ユーチューバーやインスタグラマーとも競合することになります。資源が限られるフィットネス指導者としてオンラインでも活躍するには、自分のレッスンを届けたい相手をかなり絞り込んで明確にし、ピンポイントでタイトルに分かりやすく示すこと。そしてまずは、知っている人、会ったことがある人に届くように、ブログやSNSで何度も訴求することが大切です。そのうえで、たとえ3人でも、参加してくださった人を大切にして、口コミやSNSのシェアを増やしていくことが大切です。ジム・スタジオで集客力があっても、オンラインの世界は全く別です。それを肝に銘じてスタートするほうが、頑張り続けられると思います。オンラインレッスン市場は急成長分野でユーザーも増えていますが、同じくらいのスピードで競合サービスがたくさん出てきています。自分をいかに差別化して際立たせていくか。オンラインレッスンの提供方法も集客手法も、みんなが試行錯誤中。早く始めて、失敗をたくさんしながら学び続けた人が、アフターコロナの新たな活躍の場を掴めるはずです」

オンライン養成コースの可能性

 金子智恵さんも、オンラインレッスン配信をいち早く始めた一人で、金子さんが得意とするラテン系カーディオレッスンで、高い集客力を発揮している。その指導力を活かして、自身で企画するオンラインレッスン、月刊ネクスト主催のオンラインイベント、大手チェーンのオンラインレッスンなどを担当し、様々な方法でのレッスン配信に関わってきている。
 その金子さんが、新たに可能性を見出したと話すのが、オンライン養成コースである。金子さんは、感染者が拡大する前の2月はじめに、第33期となるラテンエアロビクス指導者養成コースを企画してブログやSNSで告知。4月25日~26日に実施の予定で申し込みを受けていた。ところが4月に入るとクラブも休業、インストラクターたちも外出自粛となり、開催を躊躇ったという。それでも金子さん自身もオンラインレッスン配信に自信がつきはじめていたため、思い切って養成コースもオンラインで実施することを決めた。
 通常2日間、合計32時間で、講義と実技でラテンエアロビクスが実施できるスキルが習得できるという内容だが、オンラインを活用することで、実技のスキル向上が大きく見られたと話す。その要因として、コース中に、実技課題として「ウォーミングアップ」「コリオのブレークダウン」「コリオ作成」など、テーマごとに課題を出し、自分なりにコリオを組み立ててプレゼンテーションするという内容がある。これまでは、基本的な考え方を座学で学んだ後に、各自コリオを考える時間をとり、その場で、お互いにプレゼンテーションし合って、金子さんがフィードバックするという方法をとっていた。これをオンライン養成コースでは、座学はオンライン講義とし、実技は、後日自分で録画したものを金子さんに提出、その動画を見ながら、金子さんがオンラインで個別にフィードバックする方法に変えた。こうすることで、養成生は、自身のプレゼンテーションを動画で客観的に見ながらフィードバックを受けることができ、より多くの気づきが得られる。さらに動画を録画して送る際に、いい出来のものを提出しようと、自らスキルを高められることになる。座学や自身へのフィードバックも録画で残すことができるので、復習も可能となる。こうして、第33期の養成コース参加者は、高いスキルを習得してアドバンスコースに進むこととなった。
 レッスン動画の収録に慣れておくことは、今後、オンラインレッスンが浸透していくことを考えても、時代に合った学び方だと言える。オンライン養成コースであれば、遠方からでも参加しやすく、学びも継続しやすい。
 今後養成コースも、オフラインとオンラインを融合させて、新たな価値と学びが得られるスタイルになっていきそうだ。

オンラインレッスンのリスク対応

 6月から急速に浸透しているオンラインレッスンだが、市場が拡大して多くの事業者、指導者、参加者が関わるようになる中、指導に直接携わることになるインストラクターとしては、各種のリスクにも配慮しておくことも重要となる。
 まず、オンラインレッスンを実施する環境は、参加者の自宅である場合が多く、フロアや動くスペース周りの環境、部屋の温度や湿度も参加者が自由に設定できることになる。汗をかきたいと、部屋を温めて強度の高いレッスンに参加したり、家ではマスクをしないため高強度で動ける一方で、フロアの状態によっては足を痛めるなどのリスクもある。
 また、自宅で受けられることで、高齢者やリスクを持っている方も参加しやすくなり、事故が発生する確率は相応に上がることになる。
 オンラインレッスンでも、開始前に体調のチェックや、フロアの状態や室温などの環境に、参加者自身が適切に対応できるよう促すことに配慮したい。また対象者によっては、zoomミーティングなど相手が見える機能でカメラをオンにしてもらい、参加者の様子や動きが見える状態でレッスンを進めることも大切になる。事前に参加者の既往症などの情報を得ておくことや、緊急対応の事前確認、保険加入なども検討が必要だ。
 その他、音楽を利用するレッスンを提供する場合の著作権への対応や、有料で配信する際の個人情報や決済情報の管理などにも、認識を深めておくことが重要となる。


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