掲載日:2021年06月18日  更新:2021年10月07日

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NEXT AWARD トレーナー・インストラクター オブ・ザ・イヤー 2010

フィットネス業界の発展に力を注ぐ指導員を表彰する『トレーナー・インストラクター・オブ・ザ・イヤー』がついに決定!各受賞者およびその活動内容を一挙紹介。

岩井智子さん
『月刊NEXT』 編集長

トレーナー部門 最優秀賞 吉田直輔さん

トレーナーとしての使命を果たすべく、2つのジムの経営にあたり、自身もセッションを提供する傍ら「合同研修会」を開催、その使命感を共有している。組織力を特に重要視し、組織として取り組むことで、さらに大きな力を生み出そうとしている。

高い売り上げを支えるもの

パーソナル&加圧トレーニング健康大陸。吉田直輔さんが自分の使命感や思いを形にしたパーソナルトレーニングジムは、着々と進歩を遂げてきた。2008年11月に新宿にオープンさせた1号店に続き、2010年5月に三軒茶屋に2号店をオープン。スタッフは10名となり、現在では2店合計で月1,000を超えるセッションを提供するに至る。

「新宿店オープンからしばらくは、指導業務を中心に行い、一人で月に200セッション入っている時期もありました。まずは売り上げを安定させて、その後、人材育成にも力を入れ、組織としての力も高めてきました。現在は、自分での指導は月130セッション程度に抑えて、さらに売り上げを高めるべく、運営と人材育成に力を入れています」

その一環として2010年にスタートさせたのが、「合同研修会」である。自クラブのスタッフと、知り合いのトレーナーに声をかけて、月回のペースで開催した。内容は、トレーナーとして必要となる正しい知識と指導技術。だが、吉田さんがそこで本当に共有したいのは、トレーナーとしての使命感だと話す。

「トレーナーとして、知識や経験はもちろん大切ですが、そうした知識や経験をつかさどるのは『理念』や『信念』だと思います。その『心』が最も重要で必要だということを共有したいと思っているんです」

偶然の出会いと、2つの使命

トレーナーとして熱い情熱を持つ吉田さんだが、トレーナーになったきっかけは偶然の重なりだった。吉田さんはそれを「運命」と言うが、その時々を真剣に生きる中で導かれるようにこの仕事にたどり着いた。

幼少期は病弱で、年に2回は40度以上の高熱を出し、病院通いが日常の生活だったという。それを変えたのが、小学校2年生から始めた柔道だった。中学生になるとプロレスに興味を持ち始め、高校ではレスリング部に所属、プロの総合格闘家を目指すようになる。その思いを叶えるため、卒業後自衛隊に入隊。自衛隊体育学校レスリング班に所属してレスリングを続け、4年間を務めた後に、満を持して総合格闘家としてデビューした。パンクラスネオブラッドトーナメントで優勝するという戦績も残した。

だが、生活は厳しく、トレーニングや練習の合間にアルバイトで生活費を稼ぐ日々。そんなある日、パチンコ屋でアルバイトをしていると、自衛隊体育学校時代のフィジカルトレーナーと偶然再会した。そのトレーナーは吉田さんにこう声をかけた。

「こんな雰囲気の悪いところで働いてないで、トレーナー募集してるところがあるから、やってみたら」。それまで厳しいトレーニングも続けてきている自信もあり、早速チャレンジしてみることに。だが、トレーナーの道もまた険しかった。

「一般の方より経験もあるから、それを伝えればどうにかなるだろうと簡単に考えていたんです。ですがそんな薄っぺらな自信はすぐに打ち崩されました。こんなに通用しないものかって。」

以来、トレーナーとして仕事をしながらの猛勉強が始まる。お客様の話を聴いては勉強する。それまでも運動が人にとって大切だということは確信していた。身体の弱かった自分が柔道で強くなれた。試合に負けて心の痛みを味わうことで、心も強くなれた。間違えたトレーニングをしてケガをしても、正しいトレーニングでそれを改善したり、強化することもできる。トレーニングの勉強をすればするほど、「運動は大切だ」という確信が、トレーナーとしての確かな自信へと変わっていった。

健康大陸グランドオープンの準備とちょうど同じ時期、奥さんのお腹に新しい命が宿ったことを知る。壮絶な出産に立ち会い、子どものへその緒を切ったとき、この二人を一生守っていくことも吉田さんの使命となる。そして、それをトレーナーの使命とともに全うできると感じたのが、このジムでの同志との活動だったのだ。

組織力を上げる

今後の課題は、運動を始めた多くの方々が、長く運動を続けてくれる環境をつくること。そのために、自分がやってきたこと、自分の使命感を仲間のトレーナーと共有していきたいと話す。

「私のお客様は長く運動を続けてくださる方が多いのですが、自分なりにその要因を分析すると、お客様の話を良く聴いてきたからではないかと感じています。『聞く』ではなく、心がついた『聴く』です。トレーニン人生満足度グだけではトレーニングは続けられない。潜在的に抱えていることを自然に引き出して、精神的な落ち着きというベースが持ててはじめてトレーニングも充実できる。聴くことによって伝えられることも多くなるんです」

現在吉田さんのジムのスタッフは10名。ジムをオープンさせるときに、自分の理想に向けて組織で取り組みたいと考えた。それは吉田さんが「一人の力よりも、同じ使命感を持った人が集まったほうが、単純にパワーが大きい」と考えるからだ。

組織力を大切に考える吉田さん。組織が一体となって、運動の良さや価値を一人でも多くの人に伝え、健康溢れる日本にする。クラブ名の「健康大陸」にはそんな思いも込められている。

吉田直輔さん(32)Tadasuke Yoshida
「パーソナルトレーニング健康大陸」ゼネラルマネージャー。総合格闘家からトレーナーに転身。トレーナー歴は約6年。2年前に自分の使命を共有できる場を創りたいと「健康大陸」を立ち上げる。1号店の新宿店に続き、2010年三軒茶屋店もオープン。トレーナーの勉強会「合同研修会」も立ち上げ、その使命感と指導技術・体験を共有しているNESTA-PFT、JHCA-FC。

受賞理由
応募資料が分かりやすくまとめられており、自身のこれまでのストーリーや、パーソナルトレーナーとして大切にしたいと考えていることなどが伝わってきた。自身でも月200本にのぼるセッションを担当していたところから、セッション数を抑えてジムのオープン責任者として計画的に集客やトレーナーの育成を行ってきている点なども評価された。

Must Item
「いいんだよ」「夜回り先生のお願い」はともに尊敬する水谷修氏の著書。「幸福の王子」はオスカー・ワイルの不朽の名作童話。ともに自己犠牲から人々に勇気と生きる活力を“くばる”という行動に強く共感。人は人に優しさをくばり、くばられ、助け合い生きる事が大切なんだと再認識させてくれるアイテムです。

写真
①子供。吉田さんのパワーの源、奥様ともうすぐ3歳になる長男。出産に立ち会い、その感動に、2人を守り続けることを強く心に誓った。

②自衛隊教育。規律を重んじる基礎を叩き込んで戴いた自衛隊教育時代。(本人1番奥)

③自衛隊体育学校。オリンピックを目指し、最新トレーニングや古き良きトレーニング実施の日々を送っていた自衛隊体育学校時代。(本人右から3番目)

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