トレーナー部門
最優秀賞
渡部真吉さん(秋田県)
柔道整復師、健康運動指導士
NSCA-CPT
インストラクター部門
最優秀賞
石塚直樹さん(東京都)
株式会社HEART BEATING代表取締役 心舞連連長
プログラムディレクター部門
最優秀賞
谷春代さん(長野県)
ひめトレディレクター
JCCA マスタートレーナー・講師
副島理子さん (神奈川県)
ALL HAPPY株式会社 代表取締役
渡辺なおみさん (宮崎県)
株式会社 夢の応援団 取締役
審査委員特別賞
古谷篤典さん (千葉県)
株式会社fan’s 代表
西口雄生さん (愛知県)
Y-fitness project代表
安井ちなつさん (神奈川県)
Private training space
『Green Room』個別体操教室 代表
トレーナー部門 最優秀賞 渡部真吉さん(34歳)
秋田県で活動する渡部真吉さん。秋田県といえば、少子高齢化率全国1位、がん死亡率1位、自殺率1位と、日本の中でも課題先進国ともいえる土地。そこで、「トレーナー」という立場にこだわりながら、よりよい社会に近づけるべく邁進する。現状では、単に「トレーナー」と言っても耳を傾けてくれる人は少ないものの、「トレーナー」ができることを伝えたい。2013年、その渡部さんの強い思いが数々の実績に繋がった。
この地に「トレーナー」が いること、「トレーナー」ができることを知って欲しい
渡部真吉さんの拠点は、冬の「かまくら」で知られる秋田県横手市。壮大に広がる田んぼの一角にある接骨院が渡部さんの活動の拠点だ。仙台のスポーツ系専門学校を卒業後、民間フィットネスクラブ、公共スポーツ施設勤務などを経て、柔道整復師の資格を取得。4年前に開業した。仙台や盛岡などで学び、経験を積んだ後に地元秋田に戻り、この地でスタートした活動が、2013年、幅広い分野での活動に繋がった。
数々の活動に踏み出すきっかけとなったのは、2012年にミス・ユニバース・ジャパン秋田大会でオフィシャルボディメイクトレーナーを務め、担当した秋田代表が、日本大会のスポンサー特別賞を受賞したことだ。もともと地元で活躍するスタイリストやメークアップアーティストなどと「秋田美人をプロデュースするようなプロジェクトがしたい」と企画を練っているところに、ミス・ユニバースの地方大会運営者との縁があり、2週間のビューティーキャンプを企画運営。その模様と結果が地元のメディアをにぎわせた。
これをきっかけに、運動指導者としてメディアへの露出機会が増えた。2012年1月には、地元ABS秋田放送の夕方のニュースで放送された「女性をキレイにする」特集企画では、”ミス・ユニバースのボディメイクを担当した整骨院院長”としてインタビューされた。渡部さんはその効果についてこう話す。
「秋田の人は、見栄っ張りで保守的なところがありますから、一トレーナーが何を主張しても聞いてくれる人は限られています。同じ内容でも、華やかな有名人や、ドクターや先生など権威を感じさせる人が言っただけで、急に聞き耳を立てて、悪くいえばそうした情報にすぐ流されてしまうところがあると感じています。トレーナーとして正しい情報を届けたい。そのためには、秋田の生活者の方々が、『この人の言うことなら』と感じて貰えるような存在になる必要があるのです」
自身を演出する一方で、渡部さんはトレーナーであることを大切にしている。時にはビューティーアドバイザー、時には白衣を着た接骨院の先生であっても、現場ではジャージで運動を教えるトレーナーであることを誇りにしている。
その本質的なトレーナーの力を存分に発揮しているのが、自治体の活動であり、小・中・高校に出向いてのトレーニング指導である。
渡部さんは、国家資格である柔道整復師に加えて、民間資格で自治体の活動に活きる健康運動指導士、スポーツ分野での指導に活きるNSCAなど、それぞれの分野の資格を持っている。秋田でこの3分野の資格を持っているトレーナーは他におらず、貴重な存在となっている。渡部さんにとっては資格も、少しでも多くの人に正しい情報を届けるために、その分野での仕事に参画するための紋所のようなもの。
自治体の介護予防分野では国家資格も持っていることから機能訓練指導員としても現場に携わることができる。渡部さんは柔道整復師の学校を卒業する数个月前から、地元の自治体や保健所を回って営業活動。地元の7市町村に声をかけたところ、うち3市町村の担当者と面会でき、地元に戻るとすぐに自治体での運動指導をスタートさせた。現在では秋田県の嘱託運動指導員として、地元企業の健康指導教室の講師や、地元のボランティア指導者養成などの事業にも携わっている。
ジュニア世代の運動指導は、公共のスポーツ施設で働いていた時の縁を大事に育ててきている。渡部さんが勤務していたスポーツ施設に、ある中学生のアルペンスキー選手がトレーニングに来ていた。全国中学校スキー大会で優勝する実力を持つ選手で、怪我で練習ができず、リハビリを兼ねてトレーニングに来ていたのだ。当初は施設のトレーナーとしてその選手を見ていたが、その選手が高校に進学すると、その高校のコーチから声がかかり、以来その選手とチームのトレーナーとして働くようになった。また渡部さん自身学生時代に野球をしていた経験から、野球をしているジュニア選手のトレーニングにはどうしても目が行った。施設にトレーニングに来ていた高校生の部活チームにボランティアで指導に行ったことをきっかけに、隣の部活チームの先生からも声がかかるようになり、次第にジュニア世代のトレーニングにも関わるようになっていく。
さらに地元でスポーツトレーナーとして活動する人の多くが、柔整師などの国家資格を持っていることから、そうした資格を持ちアスレティックトレーナーとして活動している人とのネットワークを築いていくうちに、秋田県の体育協会所管のトレーナー部会にも所属。国体での帯同トレーナーの仕事なども行っている。渡部さんはこう話す。「ジュニア世代には、特に正しい情報を届けたいと強く思います。というのも、自分自身野球に打ち込んできて、野球推薦で進学し、プロ野球選手になることを夢に描いて頑張っていました。でも、先生が言うことと、教科書に書かれていることが違って、何が正しいのか分からないまま頑張るうちにオーバーユースで腰痛を助長してしまい、結果が残せなかったのです。その経験から、一人でも多くの頑張っている人が、『やり切った』と思えるように、迷わず頑張れるように、トレーニングの原理原則を伝えていきたいと思っています」