掲載日:2021年06月24日  更新:2021年10月07日

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NEXT AWARD トレーナー・インストラクター オブ・ザ・イヤー2013

フィットネス・トレーニング指導者の活動範囲を広げ、広く業界と社会に貢献する活動を称えるネクストアワード『トレーナー・インストラクター・オブ・ザ・イヤー』
2013の受賞者が決定!フィットネス・トレーニング分野で高い価値を生み出している各受賞者の活動内容を紹介する。

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指導風景
いつもベビーに邪魔されながら、トレーニング!

プログラムディレクター部門 最優秀賞 ひめトレディレクター谷春代さん 副島理子さん 渡辺なおみさん

骨盤底筋群は身体の機能や動きを支える重要な役割を果たしているにもかかわらず、運動指導が最もしづらい部位でもあった。一般生活者の中にも悩みを抱えていながら、相談したり解決できないでいた人も多い。ここにダイレクトに効果的にアプローチできる画期的なツールとプログラムが、この「ひめトレ」だ。2013年春に発売後、指導者のネットワークを通じて急速に浸透。指導者は約1,000名に広がり、発売本数25,000本を超えるヒット商品となっている。

尿もれ予防体操に、最強のチームが発足!

「ひめトレ」開発のきっかけは、副島理子さんが自治体で行っていた介護予防教室内での尿もれ予防体操。参加者のほとんどが女性の中、数人男性の参加者がいた。副島さんはこの分野の指導を長くしてきており、女性に向けた骨盤底筋群を意識して貰うための指導法や伝え方のノウハウは蓄積してきていたが、男性は身体の構造も違うこともあり、男性にどう伝えたらいいのか分からないでいた。そこで、一般財団法人日本コアコンディショニング協会(以下、JCCA)でよく一緒に仕事をしていた理学療法士の渡辺なおみさんに相談すると、「外部からの感覚刺激を入れるといい」とのアドバイス。骨盤底筋群がある部位に、何かが触れることで脳が認識して筋肉が反応しやすくなるという。そこで、タオルを直径3~4cm程度の筒状に丸めてその上にまたがるように座ることを試してみることにした。実際に現場で男性にもやってもらうと、これまで意識できなかった部位が意識できることが分かった。同じように自治体で介護予防事業にも携わり、似た課題を持っていた谷春代さんも、いちはやく指導にこの方法を採用。当初は3人で知識や経験をシェアしながら尿もれ予防のエクササイズとして考案していたが、座った時にタオルのようにつぶれてしまわない素材にすることでより効果的に骨盤底筋群が意識できるという仮説のもとに、ストレッチポールの製造販売を行う株式会社LPNに試作品の作成を依頼。ここから「ひめトレ」ツールとプログラムの開発が始まった。約5年前のことである。

日本のフィットネス業界の英知が集結

当初3人を中心に進められていた「ひめトレ」開発に火がついたのは、試作品を持って全国を回り、成果や声を集めていたところ、ある北海道のプロバスケットボールチームのトレーナーを務める理学療法士が「これはシニアだけではもったいない。体幹を意識するうえで、すごくいい!」と絶賛してくれたことがきっかけとなった。丸めたタオルでは得られなかった効果を実感。骨盤底筋群はいわゆる体幹と称されるインナーユニットの一部を構成しており、骨盤底筋群が意識できる。これによりインナーユニット全体が意識しやすくなり、体幹が安定することで姿勢が良くなり、パフォーマンスも向上する。それまで高齢者に対象を絞って考えてきたが、この気づきをもとに、アスリートから腰痛などで悩む若い女性まで、悩みを改善できる可能性が広がった。そこから、商品化に向けて、3人の活動にJCCAのネットワークを通じて英知が集められていく。副島さんはその経緯をこう話す。

「ひめトレはプロジェクトチームで動く素晴らしさを実感させてくれました。3人の発想から始まりましたが、エクササイズプログラムは、谷さんと私が考え、渡辺さんに理論的裏付けをして貰いながら作りました。しかしひめトレがここまで広がったのは、開発の過程でご協力いただいた方々が、おしみなく知識や経験を提供してくださったからに他なりません。それは指導者研修カリキュラムを提供・監修してくださった尾陰由美子さん、骨盤底筋群のエクササイズの権威である岡橋優子さんをはじめ、JCCA指導者のネットワーク、株式会社LPN幹部の商品開発~販売における戦略、ひめトレに関わってくださったすべての方の英知が集結されたからこそ、ここまで急速に発展・浸透するプログラムになったのだと感じています。本当に素晴らしいチームで動くことができたことに感謝の気持ちでいっぱいです」

成功要因は商品の魅力と指導者育成

「ひめトレ」の成功要因としてひめトレディレクターたちが挙げるのは、商品自体の魅力と、インストラクター認定セミナーの構成である。

商品自体の魅力については、本誌2014年3月号にも紹介したとおり、体験会と商品改良を繰り返してできあがった骨盤底筋群に適切な感覚刺激が入れられる形状と硬さ。円柱ではなくおにぎりのような丸みのある三角形にすることで、三角形の底辺になる部分を上にすればお尻への接地面積が増え、骨盤底筋群への感覚刺激がソフトになる。ユーザーが自身の感覚に合わせて、2段階の刺激から選べるようになっていることで、より多くの方がストレスなくエクササイズを続けられることになる。

エクササイズ効果の分かりやすさも大きな魅力となっている。今まで意識しづらかった骨盤底筋群が確実に意識できることはもちろん、エクササイズ後体幹が適切に働くことで内臓もより適切な位置に戻り、ウエストが平均3~5cm、効果が高い場合で8~12cmもその場で細くなるという。一般生活者にエクササイズを提供する際にモニタリングの一つとして、エクササイズ前にヒモでおへその位置の胴回りの太さに印をつけて貰い、エクササイズ後に同じヒモで同じように計測。これにより、その場で明らかな効果を実感していただけることに繋がっている。

インストラクター認定セミナーについては、グループ指導を行えるようになることを前提にしたことが功を奏している。これまでJCCAのプログラムや、コアトレーニング指導は個別指導を前提としたものが多かった。今回ひめトレの指導者認定セミナーには、数々のインストラクター養成コースのカリキュラム作成を手掛けてきている尾陰さんが、グループ指導者育成ノウハウを応用して盛り込んだ。これにより、セミナーを受けたインストラクターがグループ指導のスキルも得られることになった。

プログラムを分かりやすくシンプルな構成にしたことも、伝播力を高めた。「ひめトレ」の基本プログラムは、「SSB」と呼ばれる段階を必ず行うこととしている。「SSB」は、「S:センサリアウェアネス(感覚入力)」「S:ソフトスクイーズ(軽く締める)」「B:ブレスワーク(呼吸)」の頭文字をとっており、これを約3分間で行う。このSSBだけでも骨盤底筋群や体幹にスイッチを入れることができる。そのうえで、対象者の状態や目的に合わせて「ひめトレ」を使ったエクササイズを行う場合は、JCCAの体幹プログラムと同様に、
コアリラクゼーション

コアスタビライゼーション

コアコーディネーション
という順番でプログラムを組んでいく。「ひめトレ」を使ったエクササイズは21種類に絞り込まれており、指導者もプログラミングしやすく、提供しやすい内容となっている。

インストラクターが認定セミナーを受け試験に合格すると、指導用「ひめトレ」が一緒に付いてくることも普及に寄与した。インストラクターの「いいものを広く伝えたい」という気持ちを後押しする環境が用意されている。

次の段階へ

1年で一気に増えた「ひめトレ」インストラクターのフォローアップがこれからの課題となる。現在関連のセミナーは認定時の2日間セミナーのみで、グループ指導ができるようになることを目的とした内容のみ。「ひめトレ」の有用性が、高齢者から若い女性、アスリートなど多くの分野に広がっている今、それぞれのインストラクターが安心して自信を持って指導を続けられるようなサポートを今後充実させていくことを計画している。

今後もコアコンディショニングを必要とする人々に広く浸透していくことが期待される。


受賞理由
2013年春の発売以来、商品のマーケティングと指導者育成を戦略的に進め、ヒット商品・ヒットプログラムに育て上げた。骨盤底筋群というアプローチしづらく、多くの人が悩みを抱える部位に、親しみやすいイメージで行えるエクササイズを効果的に提案した功績が高く評価された。数々のメディアにも紹介され、フィットネスやエクササイズの普及にも寄与した。

谷春代さん Haruyo Tani
ひめトレディレクター、JCCAマスタートレーナー・講師、VCA認定心理セラピスト/ファシリテーターとして、運動指導者育成を行う。足立区では任意団体「健康づくり支援チーム快体心咲(かいたいしんしょ)」として足立区の各施設での介護予防事業を受託、長野県では任意団体「信州からだのき・ほ・ん楽習会」の理事として地域の方々の健康づくりに対する意識と知識を普及する支援をしている。

MUST ITEM!
手帳とシニアグラス
自分のスケジュール管理は手帳とスマホ。そして何と言ってもそれを見る時の眼鏡は欠かせない!!(谷さん)

副島理子さん Satoko Soejima
ALL HAPPY株式会社代表取締役
ひめトレディレクター、JCCAシニアスーパーバイザーとして、ひめトレとシニアのコアコンディショニングの普及に尽力。女性の骨盤底筋群の健やかさを守ろうと助産師と共にコミュニティ「ひめコミュ」を展開予定。他、広く講演活動を行う。任意団体「健康づくりチーム体楽喜楽(たいらくきらく)」として山口県下松市の介護予防事業を受託している。

MUST ITEM!
GPSつきの時計。走った距離と1キロごとのラップタイムが出ます。ラップを追いかけて追い込むのが楽しいです(笑)(副島さん)

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