「背骨コンディショニング」における重要なパートが、最後に行う筋力トレーニングである。適切な背骨の位置を支えるのは筋肉であり、特に仙骨を適切なポジションに維持するうえで重要な大臀筋と、頸椎および胸椎のポジションを維持するうえで重要な菱形筋・脊柱起立筋を強化するエクササイズで、背骨を体幹部の上と下で支えることを狙う。
このプログラム構成について、日野さんはこう話す。
「ほとんどの方が、仙骨が歪んでいることによる代償姿勢により、神経がひっぱられ、そこに痛みが生じているという状態にあります。ですので、まず脊柱の可動域と神経の張りをほぐすことで仙骨を動かしやすくし、仙骨を適切な状態に戻したうえで、筋肉でその状態を維持していきます。脊柱の状態が適切に保たれることで、体性神経はもちろんのこと自律神経も整い、ほとんどの不定愁訴や治りづらかった症状や難病が解決されていきます。現代医学では不定愁訴や病気の直し方は主に3つ。薬で治す方法、手術で治す方法、運動で治す方法のどれかです。運動で治すことの認知が現状ではまだ低いですが、その成果は多くのケースで実証されているのです」
リーゼントスタイルの敬虔なクリスチャン
ここでこの画期的なプログラムを開発した日野さんにスポットを当てよう。日野さんは、フィットネス関係者としては珍しいリーゼントスタイルを自身のアイデンティティとしている。18歳のときに大手フィットネスクラブでアルバイトを始めた頃から一貫してこのスタイルだ。日野さんは、北海道で敬虔なクリスチャンの家庭のもとに生まれ、13歳で洗礼を受けるがその後反抗期が訪れる。「シルウェッツ」というロックンロールバンドを組み、舘ひろしもメンバーの一人だったことで知られる人気バンド「クールズ」の前座を務めるに至っていた。このバンドの取り巻きが増える中、チーマーブームが訪れ、札幌のチーマーの草分け的存在となって行く。フィットネスクラブでアルバイトをしながらトレーニングを始めたのも、チーム同士の抗争に備えるため。「抗争に巻き込まれて殺されないようにと、必死にトレーニングしていました」と当時を振り返る。
ところが、必死にトレーニングに取り組む姿や、とことん身体のことを知ろうと、トレーニング理論、運動生理学、栄養学を学ぶ姿勢がそのフィットネスクラブの上司に認められることになる。アルバイトとして7年間働いた後に正社員として採用され、入社後も間もなく大抜擢を受けてプログラムディレクターとなり、数々のエクササイズプログラムの開発に携わった。
だが、その後転機が訪れる。フィットネスの仕事で自信をつけた日野さんは、独立して様々な事業を始めた。しばらく離れていた教会にも時々顔を出し「仕事がうまくいきますように」と祈るようにもなった。だが再び、少しばかりの金を稼ぐために教会を休みがちになった。日野さんは、当時を振り返って、「神を抜き、自分の力に頼ったところを神にみられた」と言うように、ことごとく事業は失敗。あっという間に貯金も底をつき、毎日借金の取り立ての中、身体も心も窮地に追い込まれていく。限界を感じたとき、クリスチャンとして洗礼を受けた身であるにも関わらず「もう神さまなんていらない!」と暴言を吐いてしまう。すると神の声が聞こえてきたという。「いままでの神との関係はどうだったのだ」。そのメッセージに自分を取り戻し、聖書を読む事、礼拝に出る事を優先した。
必要な物や命も、神からのもの、自分で生きているのではなく生かされていること、神や周りの人に感謝した事もなかったことを思いだした。深く反省し、当時所持していたなけなしのお金をすべて献金した。すると、そこから一転して日野さんが神から授かった賜物が光を放ち始める。
その数日後、長年腰痛に悩む知人の腰に手を置いたところ、仙骨が動く感覚を得た。そして以前から勉強してきた身体の仕組みに沿って不具合を解消するエクササイズを紹介したところ、その場で腰痛が改善された。その出来事が知りあいに口づてで広がり、次々に腰痛に悩む人が日野さんのところに訪れるようになる。気づくと、その1ヶ月だけで70万円以上の収入が得られていた。何よりみんなが喜んでくれていることが嬉しかった。そこから、仙骨から背骨を整えていくアプローチを体系化し普及する活動がスタートした。
日野さんは現在ではクリスチャンとしても、このプログラムで多くの人を救いたいと大きな希望を持っている。
「洗礼を受けると、神様から賜物が授けられると聖書に書かれています。私の場合、それは癒しの賜物だと感じています。聖書に『信じる者に手を置けば、病いは癒される』という教えがありますが、自分が経済的な試練にあい健康も危ぶまれ、人間の限界を感じ、己を捨て、すべてを手放した時にこの賜物がいかされたのだと思います。現在、どんどん膨らむ医療費の一方で、生活保護さえ十分に受けられず、餓死する人もいるのが今の日本です。だからこそ、このプログラムによって売上でなく、医療費の削減目標を達成していきたい。そしてそのお金と医療が必要としている人に適切に配分される世の中になることに貢献していきたいです」
日野秀彦さん Hidehiko Hino
背骨コンディショニング創始者
一般社団法人背骨コンディショニング協会代表理事
北海道札幌市生まれ、札幌市在住。日本最大手フィットネスクラブ第1期フィットネスディレクターとして、研修やプログラム開発に従事。その後、独立して「背骨コンディショニング」を考案。手術をしても治らない原因不明の症状が改善し、奇跡のプログラムと言われるようになる。これまでに、全国各地に300人のインストラクターを養成。クチコミで広がり、全国で20万人以上に支持されるプログラムとなっている。
受賞理由
西洋医学では“動かない”もしくはミリ単位でしか動かないとされる仙腸関節が、センチ単位で動くとしたことで、新たな理論とプログラムが創りだされた。指導者同士共有できる理論にまとめ、グループセッションも行えるプログラムに落とし込んだことで、実際に多くの人々に効果をもたらし、支持されるに至っている。数々のフィットネスプログラム開発で得た知識や経験と、そこで培った直感から生まれたプログラムとして注目される。
MUST ITEM!
20年前と現在の日野秀彦。着てるものから髪型からほぼ一緒!車だって1959年式から変わっただけ(笑)
MAST ITEM=ロッケンロール魂
写真
①上半身と下半身を繋ぐ仙腸関節の適切なポジションと、脊柱からの神経解剖への理解から、効果的な「背骨コンディショニング」が行えるようになる
②仙骨と頸椎の調整は、セルフエクササイズも用意されているが、パーソナル指導では、よりその方の症状に合わせた矯正を行う