掲載日:2021年08月08日  更新:2021年10月07日

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NEXT AWARD トレーナー・インストラクター オブ・ザ・イヤー 2016

フィットネス・トレーニング指導者の活動範囲を広げ、広く業界と社会に貢献する活動を称えるネクストアワード『トレーナー・インストラクター・オブ・ザ・イヤー』2016の受賞者が決定!フィットネス・トレーニング分野で高い価値を生み出している各受賞者の活動内容を紹介する。

③人の縁を証明できるチームアクブル

④2015米国フロリダ【アイチ20周年イベント】にて講座を担当する

⑤デビューからの担当クラスは26年目となる。担当歴が20年以上のクラスは現在4クラスです

⑥日本初のアクアバイクの指導者でもあります。常に新しい挑戦も重ね、温故知新を大切に思います

坪井さんのこれまでの仕事人生グラフ

プログラムディレクター部門 最優秀賞 岩崎真宏さん 一般社団法人日本栄養コンシェルジュ協会 代表理事

細胞レベルの栄養学を全ての人に

2017年2月に岩崎真宏さんが代表理事として設立した一般社団法人日本栄養コンシェルジュ協会。理事には、北京オリンピック男子陸上リレー銀メダリストの朝原宣治さんを筆頭に、アスリートや医学博士、医師、管理栄養士、臨床検査技師などの肩書きを持つ専門家たちが名を連ねている。岩崎さん自身も、医学博士、管理栄養士、臨床検査技師の肩書きを持ち、本協会設立までに、研究者としての仕事も、病院の現場での仕事も、両方を経験。研究者としては、生活習慣病の基礎研究として、細胞の中での栄養のやりとりがどのようになされているのかを研究。病院では管理栄養士として糖尿病患者の食事指導に携わりながら、基礎研究を現場に活かす活動を続けていた。

「栄養コンシェルジュ®」の構想は、そのさなか、2013年に作られたという。

「栄養は、誰にとっても、生まれてから死ぬまで必要なものですが、正しい知識を学ぶ機会はあまりないものです。その理由は、栄養の研究者にとって、情報を提供するターゲットは医療分野であり、また、現場指導者となる管理栄養士の職場もほとんどが病院。そのため本質的な栄養に関する情報は、医療分野に留まりがちなのです。そのため、一般生活者は本質的な栄養の情報に触れる機会がないまま、環境や意識によって栄養学格差が生まれてしまっているのが現状です。『栄養コンシェルジュ®』は、この栄養学格差をなくすべく、実践的な『専門力』『応用力』『教育力』が養える学習プログラムとして開発しました」

栄養学研究者の知見を、栄養の専門的ニーズの高いアスリートやトレーナーたちが活用できる形で届けるとともに、栄養意識ピラミッド(図1)の第三層の人たちも、正しい知識を学ぶことができれば、自身の身体の仕組みに興味を持ち、第二層に上げられることで、フィットネス人口が増え、より幸せに暮らせる人が増えると考えた。

岩崎さんが栄養分野で独立することを決意したのは高校卒業のとき。野球少年であったことから身体を使って人を助ける職業への憧れがあったが、1回きりの人生を楽しく幸せに生きるには、周りの人や、遊びに行ったり、旅行に行ったりした先で出会う人々も病気にならず元気でいることこそ大切だと考えるようになった。学生時代、理系を専攻していた岩崎さんは、「それなら全ての人にとって一生必要で、元気でいられるうえで必要な栄養関連の仕事で、みんなの幸せを実現しよう」という結論にたどり着いた。そして、それを実現するうえで必要なこととして、2つのことを自分に課した。1つは研究者として医学博士になり身体の仕組みを知ること。そして、もう1つが臨床経験を積み現場を知るということだった。

やがて計画どうりそれらを達成した時点で、「自分だけ知っていても広がらない」と、その知識や応用ノウハウを学習プログラムにまとめた「栄養コンシェルジュ®」を構築。34歳で大学も病院もやめて独立し、2016年に教育事業としてスタートした。

サポートツールによって自分の知識を使えるようになる

学習プログラムとしての栄養コンシェルジュ®の特徴は、栄養や食事について細胞レベルで考えられるようになること。例えば、同じ糖質でも、お米と果物では代謝が違うため、果物のほうが3倍内臓脂肪がつきやすい、といったことが原理原則から学べる。それでいて、その人の身体にとって影響力の高い項目から順に学んでいけるようになっており、細胞レベルの知見を実際の食事改善に繋げやすい。つまり、非常に専門性の高い内容を、シンプルに学ぶことができるのが特徴となっている。

その学習と実践をサポートするうえで、独自のツールも開発した。

例えば、身体状態を見極める「メディカルデータリーディングフローチャート」。健康診断で出てくる各数値を組み合わせで見ていくと、内臓の状態がわかる。その数字の見方が誰でもできるようにフローチャートにまとめており、そのチャートに沿って各数値同士のバランスを見ていくことで、その人の内臓の健康状態に影響を与える栄養面での課題が浮き彫りになるという。

また、栄養指導の現場用に開発した「ニュートリションコンサルティングガイド(NCG)」では、栄養に関する「ヒアリング」「カウンセリング」「プランニング」を効果的に行えるように、各種のシートに加えて、トークスクリプトも用意されている。分かりやすい言葉でコミュニケーションすることで、聴く力も、伝える力も養えるようになっている。

さらに、このNCGで利用する「食品カテゴリーマップ」では、主食、主菜、副菜、乳製品をはじめ食品のカテゴリーだけでなく、たとえば主菜の「たんぱく質」だけでも体内での働き別に5種類に分けて表示するなど、その人の状態に合わせて食品が選べるようにまとめられている。岩崎さんはこう説明する。

「よく聞かれる質問が『これは食べていいんですか?』『食べたらダメですか?』という質問。これはトレーナーさんであれば、『腹筋はしたほうがいいですか?』という質問と同じのはず。トレーナーさんは、運動の知識があるので一人ひとりに合わせた腹筋のアドバイスはできますが、栄養に関しては知識が足りず、こうしたお客さまの質問に対して巷の情報に左右されてしまったり、自分の経験に基づいた偏った考えでアドバイスしてしまっている人も多いのが現状です。『栄養コンシェルジュ®』のフローチャートやカテゴリーマップを活用すると、何をどんなタイミングで、どれだけ食べたらいいのかを、一人ひとりのお客さまの状態と目的に合わせてロジカルに判断できるのです」

身体づくりは、野菜づくりから

岩崎さんは、さらに栄養で人々が幸せになる仕組みをつくろうと、栄養豊富な野菜を生産する農業との連携もスタートさせている。有機野菜農家からの仕入れルートをつくり、栄養コンシェルジュ®がクライアントの身体や目的に合わせて、野菜や調理加工した食品、野菜を原料とした補助食品などを販売できる仕組みを構築し、2017年4月から販売を開始することを予定している。

さらに、そうした農家をサポートしつつ、アスリートのセカンドキャリアの職場として農家を位置づける取り組みも始めている。この構想について岩崎さんはこう話す。

「宮城県登米市で進めているプロジェクトでは、農業や地方創生に興味を持つアスリートを全国から募り、農業に携わりつつ、地域の子どもたちや生活者の方々のスポーツ指導にも携わってもらえる環境をつくろうとしています。例えば、トマトは持久力を高める栄養素が豊富なのですが、元アスリートが『現役や次世代アスリートの持久力を高めたい』と栽培した野菜は、ただの野菜でなく『想い』というさらなる栄養が乗った野菜になります。その野菜がアスリートの身体づくりに繋がるとなれば、農業が、とても夢のある仕事になる。2020に向けて、この仕組みをつくり上げて、『トレーニングメソッド』『栄養メソッド』『農業メソッド』を連携させた地方創生ビジネスモデルとしてアジアに展開していくことも計画しています」

この農業との連携は、岩崎さんが栄養の大切さについて、宇宙単位で捉えていることが関係している。

岩崎さんは、「栄養は宇宙」と話し、宇宙のエコシステムの中で、人間が栄養を摂取し、運動で消費することの大切さを説明する。その仕組みはこうだ。栄養素はそもそも宇宙の素粒子の組み合わせでできており、その栄養素の組み合わせで植物が作られる。たとえば空気中の窒素は、雨と雷によって化学変化を起こして窒素化合物という肥料となり、それを植物が吸い上げてたんぱく質となる。植物はさらに空気中の二酸化炭素と大地の水を材料に、太陽エネルギーを濃縮して、炭水化物となる。人が摂取した炭水化物は脂肪となり蓄積される。そこから運動により炭水化物や脂肪のエネルギーが使われると、水と、呼吸の二酸化炭素として空気中に戻る。植物と人間(動物)を介したエコシステムである。このエコシステムは、植物や動物が関与することで、空気の素粒子バランスが保たれ、地球環境も維持できることになる。

栄養コンシェルジュ®受講者の中には、この話を聴いて自分が脂肪を蓄え続きけてきたことで、宇宙のエコシステムの循環を滞らせてしまっていることに反省し、運動に積極的に取り組むようになる人も少なくないという。まさに、知識が意識と行動習慣を変えていけることを実証するエピソードである。

食品の細胞レベルまで熟知する栄養士が、トレーナーやアスリートと組んで目指す「食を通じた健康革命」。専門的な知識と、活用ツール、栄養豊富な農作物という3つの具体的な武器を揃えて、賛同者に力を与えながら、人々の幸せと自信の幸せを実現しようとしている。

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