掲載日:2021年08月09日  更新:2021年10月07日

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NEXT AWARD トレーナー・インストラクター オブ・ザ・イヤー2017

フィットネス・トレーニング指導者の活動範囲を広げ、広く業界と社会に貢献する活動を称えるネクストアワード『トレーナー・インストラクター・オブ・ザ・イヤー』2017の受賞者が決定!
フィットネス・トレーニング分野で高い価値を生み出している各受賞者の活動内容を紹介する。

②Navigateのパーソナルに必須となっているエンコンパスというマシン。関節可動域を最大限に広げながら筋肥大を行えます。柔軟性を手に入れながら筋肉もつく!

③ストレッチの勉強会です。解剖学書を見ながらスキルアップを目指しています。

④Navigate認定トレーナーの菅原佑馬。早田とは大学時代の先輩後輩の関係です。

⑤毎朝のミーティングでクライアントのセッション内容や心身の状況を把握し合っています。

早田さんのこれまでの仕事人生グラフ

インストラクター部門 最優秀賞 辻茜さん 合同会社Aulii 代表/一般社団法人ウィメンズヘルス協会 代表理事

2012年に銀座にピラティススタジオ「Body Making Studio Aulii」をオープン。当時お腹にいた愛娘の出産・育児体験も活かしながら、ピラティス指導とスタジオ経営を続け、ピラティスを通じた医療との連携も実現してきた。指導歴12年のママインストラクター辻茜(つじ・あかね)さんが、インストラクター部門最優秀賞を受賞した。

ピラティスと医療の連携

銀座3丁目の好立地でピラティススタジオを経営しつつ、積極的にドクターたちとのネットワークを広げる辻茜さん。2017年には、日本で初めて医師と共同開催でピラティス指導者の養成講座を開催した。プライベートでは5歳の女の子のママとして、ママや親子に向けたサービスやイベント、プロジェクトも次々に打ち出している。

中でもピラティスと医療との連携には、強い想いを持っている。

「ピラティスの資格は米国で取得したのですが、米国でインターンをしたスタジオには、病院からの紹介で来る患者さんも多く、リハビリとしてピラティスを始めて、日常生活に活き活きと戻っていかれる姿をたくさん目にしました。ピラティスの価値や可能性をすごく感じていました。日本に戻ってきたのは約12年前ですが、当時専門スタジオはまだ都内に点在するだけで、ピラティスも『ダイエット』や『体幹トレーニング』というフィットネス的な側面が注目されている段階で。米国で体験したスタジオのような光景を実現させたいという気持ちが活動の原点にあります」

辻さんが、ピラティスを啓発することに情熱を傾ける理由は、自身のリハビリ体験も元になっている。辻さんは3歳からバレエを始め、高校を卒業してからは松山バレエ団を経て海外のバレエ団に所属し、プロのバレエダンサーとして活動した。足首にケガを抱える中、海外では治療よりもリハビリやコンディショニングのためのトレーニングが重視され、ピラティスがいつも身近にあった。辻さんも、周りのバレエダンサーたちも、ピラティスがあったからこそ、ステージで輝き続けることができた。その体験から27才でバレエを引退すると迷わずピラティス指導者の道を選んだ。

養成コースは米国ネバダ州立大学で習得できるDK Pilatesを選び大学で講座を受けながら、創始者のドリー・ケラペス氏のスタジオでインターンを経験し指導者としての力をつけた。その後帰国してフリーインストラクターとして専門スタジオやバレエスタジオで指導を始めると、海外仕込みのオープンマインドでクライアントに接する辻さんのセッションはすぐに人気となり、月150本以上のレッスン指導を行うようになる。

医療との提携を具体的に意識し始めたのは、ピラティスインストラクターとして活躍する中、社会的な認知を高める必要を感じたこともきっかけとなっている。辻さんは幸い、スタジオを中心に妊娠9ヶ月までほとんど本数を落とすことなく仕事を続けられたものの、ピラティスの仕事では認可保育園への応募が減点対象になり得る現実に突き当たる。そこで辻さんは、出産後の自身の仕事と育児環境を守るために自身のスタジオをオープンすることを決意。同じような境遇にあるママやインストラクターたちをサポートすることもテーマになっていった。

さらに出産後、身近にいたママ友が体調を崩し、幼い子どもを残して他界してしまったことも、辻さんの気持ちを強めた。その友人は育児の忙しさで健診に行けなかったことで、がんの発見が遅れたという。ピラティスを通じてママたちとのネットワークをつくり、ママたちの健康もサポートしたい。ピラティスは産前産後のママにとって非常に有効なエクササイズでもあるし、世界に目を向ければ、がんのリハビリとしても活用されている。

こうした数々の体験が重なり、ピラティスと医療との連携に向けて邁進していった。

医療現場でピラティスへの関心高まる

これまでに多方面の医療関係者とのネットワークを広げる辻さんだが、その大きな一歩となったのが、2016年6月に開催された乳癌学術学会で、ピラティスの可能性について発表する機会を得たことだった。

医療との連携を強めたいと思ってはいたが、日本の医療従事者たちに受け入れられるのか不安のままに登壇すると、そこには200人以上の医療従事者や患者さんたちが集まっていた。辻さんはそこで、乳癌サバイバーがピラティスのリハビリを行い、日常生活に活き活きと戻っていきQOLが向上する経緯を紹介。ピラティス氏から直接指導を受けた第一世代ピラティスティーチャーのイブ・ジェントリーさんが、乳癌サバイバーの一人としてピラティスに励んでいる映像も紹介し、その発表は大きな反響を呼んだ。

その後、癌とピラティスに関する問い合わせが増える中、虎ノ門病院の乳腺内分泌科の田村宣子先生との縁に恵まれ、「乳癌術後ケアピラティス」プログラムの共同開発が実現。「乳癌術後ケアピラティス」の指導者養成講座を2017年10月に田村医師と共同で開催するに至る。世界的に見ても、ピラティス指導者の養成コースを病院と共同連携の取り組みとして進められていることは異例で、乳癌術後ケアピラティスを展開する世界のインストラクターからも注目を集めている。

術後と地域のサポートへ

ピラティスでの術後ケアプログラムを開発していくうちに、癌以外の術後リハビリにも応用できることが見えてきた。身体にメスを入れる手術では、共通して術後皮膚萎縮や筋委縮が見られ、組織が固まってしまう前に身体を動かし始めることがその後のリハビリやQOL維持向上のために重要となる。さらにメスが入っている場所によっては、その部分が萎縮することで姿勢に歪みが出て、まったく違う部分に痛みが出ることもある。その他にも、薬の
副作用などに関する理解も深めることで、予想される心身の不具合についても、事前にクライアントと共有することができる。それにより、安心してピラティスを続けることができる。

今後は、乳癌にとどまらず産前産後、各術後リハビリや、高齢者の各種障害のリハビリなどもについて、医師や看護師、理学療法士をはじめ医療分野の専門家とも取り組みを進め、連携できる病院も増やしていくことを目指している。また、行政や企業との連携もとりつつ、ピラティススタジオがない地域の方々に向けて、オンラインでの症例別ピラティスレッスンの配信なども計画している。

辻さんはピラティスを通じて、自身の可能性も高めていくことにも期待をかける。

「ピラティスインストラクターの仕事は天職だと感じています。バレエダンサーを職業としていたときは、持って生まれた体形で越えられない壁を感じたり、ケガをして仕事ができない辛い経験も多くしました。でも、ピラティスは学べば学ぶほど可能性が広がり、ケガをしても年をとっても続けられる仕事です。米国のピラティススタジオに笑顔が溢れていたように、一人でも多くの方が笑顔になれることを目指して、ピラティスをさらに深めて、広く伝えていきたいです」

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