掲載日:2021年08月24日  更新:2021年10月07日

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NEXT AWARD トレーナー・インストラクター オブ・ザ・イヤー 2019

フィットネス・トレーニング指導者の活動範囲を広げ、広く業界と社会に貢献する活動を称えるネクストアワード『トレーナー・インストラクター・オブ・ザ・イヤー』2019の受賞者が決定!
フィットネス・トレーニング分野で高い価値を生み出している各受賞者の活動内容を紹介する。

③フランスコンテスト
人々の繋がりを感じました

④社内プレゼン
チームとして様々な事業を行っています

小林さんのこれまでの仕事人生グラフ※群さんとなっていますが、小林さんのグラフです

プログラムディレクター 最優秀賞 松栄勲さん 身体療法家、スポーツトレーナー

「健側に触れるだけで痛みや可動域が一瞬で改善する」というVIM療法は、松栄勲さんがまとめたマツエセラピーの一部。松岡修造氏も全面的な信頼を寄せ、中村俊介や岡崎慎司をはじめJリーグで活躍するサッカー選手や、あらゆる競技のトップアスリートが多数お忍びで受けに来るマツエセラピーが、今、治療家やトレーナーの間で注目されている。この独自メソッドを医科学的にも実証し、数々の実績に繋げている松栄勲さんが、2019年プログラムディレクター・オブ・ザ・イヤーを受賞した。

「魔法」と言われた治療法を医科学的に証明

トップアスリートのケガや、何十年と抱えてきた慢性的な痛み、難病と診断された子どもの命を、数分から数十分の施術で救う松栄勲さんは、長く海外において「魔術師」や「神」と呼ばれ、見えないエネルギーや不思議な力を持っていると思われていた。

その松栄さんが、約3年前に自身がそれまで研究してきた治療法を10のメソッドの「マツエセラピー」としてまとめ、治療家やトレーナーの育成をスタートした。そのメソッドの中でも、一般生活者がセルフコンディショニングとして行える「VIM体操」を書籍にまとめ、2019年11月に出版。それまでにも、自身の施術効果についてのエビデンスをまとめるべく、金沢大学院医学系研究科医科学専攻として大学院で研究を進め、論文発表も果たしている。

「魔法」と言われた治療法が、医科学的な見地からも実証されてきたことで、治療家や医療関係者にも注目され、そのメソッドを自身の治療やコンディショニングに活かしたいと多くの専門家やトレーナーが学び始め、実績を出し始めている。

このメソッドは松栄さんが30年以上をかけてトレーナー、治療家として活動する中で昇華されてきたもの。スポーツ医科学の探求は、20代前半の頃から始まったという。トライアスロンやウルトラマラソンの競技者としてスポーツに打ち込んでいるときに、VO2Max理論について勉強しようと、それを提唱していた研究者がいる大学まで勉強に行ったり、動作解析ができるコンピュータが日本に導入されるとすぐにその大学で学びに行くなど、パフォーマンスを高めるための運動理論を勉強し始めた。ケガは少なかったものの、突然倒れたり、めまいや吐き気などに襲われることもあり、治療院を回ったが原因が分からない。そのとき、ある盲目の指圧師に数分の施術をしてもらっただけで、原因不明の不調が一切なくなった体験をすることになる。ここから、治療への探求心が高まり、ヨガや太極拳、気功などの健康法、当時米国から入ってきたストレッチの研究や指導なども行い、人間の身体の可能性を最大限に引き出すメソッドやメカニズムを習得しては、誰かの力になりたいと活動するようになっていく。

フィットネスクラブ社員としての20年間で培った力

松栄さんといえば、フィットネス業界経験が長い人の間では、関西を中心にフィットネスクラブを展開する株式会社ザ・ビッグスポーツで「担当者制度」という高い顧客価値を提供するジムオペレーションを浸透させたリーダーとして知られている。同社では、トレーナーを「アニメ―タ―」と呼び、アニメーターが、メンバー一人ひとりの課題やニーズに寄り添い、「担当者」として徹底的に応えていく体制をとっていた。

松栄さんが同社に入社したのは実は30代に入ってから。この会社の未知数な空気に魅力を感じて、トレーナーとして入社した。同社の企業理念でもある「サービスマインド」を人一倍持つ松栄さんは、3ヶ月ほどで支配人に抜擢され、その後、営業本部長、そして取締役へと経営者としても期待されるようになっていく。

それでも松栄さん自身は、トレーナーとして、自身の興味ややりたいことを追求。同社在職中に、度々インドやネパール、中国、スリランカ等に渡ってはヨガや瞑想等を学び、米国に行っては単身でパーソナルトレーニングの実態を学んだ。金沢大学大学院の受験勉強も、大学院入学後の研究も、卒業も在職中のことだという。

松栄さん自身は、その学びをあまり会社に還元できなかったと話すが、支配人になっても、誰よりもトレーナーらしい仕事を続け、口コミでオリンピック選手や日本代表のトップアスリートからの相談も増え、トレーナーとしての実績を残していった。また同社は2002年に姿勢健康研究所を設立し、2004年には「姿勢イノベーションシステム」として、デジタルも活用した姿勢の評価と実践、効果測定ができるシステムを構築しているが、この評価と改善のためのコンディショニングメニューには、松栄さんの知見が活かされている。

痛みの悪循環から解放するメソッド

独自で開発した「魔法」とされていたメソッドは、マツエセラピーとして、現在では治療家やトレーナーが習得できるように系統立てられている。

松栄さんの治療アプローチは、非常に包括的で、痛みなどの症状に対して、筋肉や結合組織だけでなく、自律神経、内臓、呼吸などの相互作用も勘案して治療方針が導かれていく。

松栄さんの著書「すごい体操『VIM』」では、痛みの悪循環とVIM理論による開放のメカニズムについて、図を通して説明している。痛みが出ることで、筋肉が緊張したり、筋出力が弱まったり、血流が滞ることになる。その悪循環から解放するために、身体をリラックスさせて血流を改善させることの方法論が、このVIM理論としてまとめられている。

同書に紹介されている施術のポイントとしては、「健側と患側の見極め」と「意図的抑制」が挙げられている。「健側と患側の見極め」とは、体を形式上で左右に分けて考え、「よい方」と「悪い方」を決め、悪いところは動かさずに、反対側のよい方を動かすだけで、体は良くなっていくというのが基本の考え方。「動く方を動かし、動きにくいところは動かさない」「動きたいように動く」「したくないことはしない」ということが重要としている。

「意図的抑制」については、「心も体もありのまましたいようにする」ことで、心も体もリラックスすることを指す。そうすることで、筋肉が弛緩し、血流が改善され、痛みが消えていく。この作用は、脳や神経、ホルモンなどの反応からも分析され、松栄さんの大学院の修士論文「肩関節周囲筋の意図的抑制後における肩関節最大転角度の増大と皮質脊髄路の興奮性の低下」にそのメカニズムが詳細にまとめられている。

またその他にも、慢性の肩こりや腰痛などの場合、痛みが出ない動作習慣をつくるフィードフォワード機能が働かなくなっていることは世界的に指摘されているものの、その原因は何なのか、どうしたらいいのかについて、これまで信頼できる理論がなかったことから、マツエセラピーでは、ここにも系統立てた理論をまとめ、効果的な治療方針をつくることを可能にしている。

治療からコンディショニングへそして、世界へ


現状、このマツエセラピーは、治療家向けには、「国際治療リハビリテーション研究所」にて情報共有が進められており、140人近い治療家たちが共同でこのメソッドを研究している。また、トレーナー向けには「トップアスリーツ&トレーナーズ協会」として、セミナーや認定講習会が進められており、世界にもネットワークを広げている。アメリカ、ドイツ、オランダ、ベルギー、スペインなどで活動するトレーナーも、このメソッドに沿ったコンディショニングやリハビリを進めている。松栄さん自身も、日本のアスリートが世界的に活動する昨今、LINEライブなどの機能を活用して、世界各地で活動するアスリー
トやトレーナーのオンラインサポートも日夜続けている。この3月からは、国内外でセミナーや認定ワークショップの機会を増やして啓発を進め始めた。

松栄さんの、一人ひとりにこだわる治療法が、トレーナーへ、世界へと広がり始めている。

松栄勲さん Isao Matsue
身体療法家、スポーツトレーナー
一般社団法人トップアスリーツ&トレーナーズ協会代表理事
一般社団法人国際治療リハビリテーション研究所代表理事
治療家・トレーナー歴35年。2006年、日本生理学会にて論文発表が行われ、『VIM療法』のメカニズムを実証。以来、そのメソッドがトップアスリートや治療家からの注目を集めている。「痛みで困っている人を世界から救いたい」「世界の治療を変えたい」という思いで2017年「国際治療協会」を発足させる。治療家として、人間としての心を育てる内容が、後に“魂の勉強会”と呼ばれるセミナーとなる。その後2020年に「国際治療リハビリテーション研究所」を発足。また、2018年に設立したトップアスリート&トレーナーズ協会も、アスリートをクライアントに持つトレーナーのネットワークから、世界に向けてその治療法を発信していく。
MUST ITEM
「マストアイテム」=ピアス
体にエネルギーが溢れて、心身に芯が入る気がする

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①「国際治療リハビリテーション研究所」での治療セミナー

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