掲載日:2021年10月07日  更新:2021年10月25日

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【スペシャル対談】トレーナーが受け継ぐ、東京2020レガシーとは(日米オリンピック委員会強化スタッフ TOKYO)

東京2020で、日本史上最多の金メダルを獲得した日本チーム。
五輪三連覇で、東京2020でも世界最多の金メダルを獲得したアメリカチーム。
それぞれの国のオリンピック委員会強化スタッフとして選手たちをサポートするお二人に対談いただき、東京2020を改めて振り返るとともに、新たなレガシーとして構築していくことについて、お話いただいた。
(特集対談協力:泉建史トレーナー・仲野広倫ドクター)

東京2020コンディショニング サポートのレガシーとは

泉さんは2024パリ大会に向けての 選手育成やサポートにも関わられていますが、次の五輪大会に向けて、トレーナーとして受け継ぎたい東京2020レガシーとは、何でしょうか。
泉さん

幸運にも東京五輪で様々な礎を作った世代の方や、米国で活躍している仲野さんと巡り会えたことも伝えたいです(笑)。
過去のサポート体制のお話や、海外サポートのアプローチをお聴きして、とても多くの気づきをいただいています。
私が今テーマとしている「育成教育」についても、NSCAを通じて米国には過去のデータに基づいた明確なガイドラインがあって、米国のプロスポーツでは合理的に選手の管理やサポートがされている例もあります。内容を参考にしつつ自国でできることを考えていくことも大切です。

1つ目のレガシーは、国際的なグローバル化を意識し各分野の専門家がお互いの歴史や専門性を「リスペクト」していきスポーツの本質の『する、みる、支える』の柱に繋げることです。
また大会後に「子供たちに様々なスポーツを体験するクロストレーニングを広げれたら」と数名の代表監督より言葉をいただきました。

2つ目のレガシーは、競技はもちろん、国や地域を超えて『スポーツや健康づくりの輪』があっていいと思います。クロストレーニングに触れますが障害予防の1つとして「サンプリング法(様々な動きやスポーツを体験する)」というものもあります。
1つのスポーツに限界があっても他のスポーツをすることや体験を通じて動ける喜びを感じたりすることもあります。遊ぶ程度でも問題はありません。
成長期に体がうまく動かない場合、技術を詰めるよりも、もう一度全身を使う運動をすることで、動かし方を思い出すこともあります。

一つの例ですがオーストラリアやロシアのナショナルトレーニングセンターに行ったときに、こちらが指導する他競技のトレーニングを体験させてほしいと希望がありお互いの国を高め合う体験をしたこともありました。
「コンディショニング」「育成方法」などの情報を大切に扱う力と、本日のような交流する機会の場を広げていく必要性を、10年、50年先の未来の世代のトレーナーに伝えていければと思います。

仲野さん

今回、東京五輪大会を通じて泉さんに出会い、その場で意気投合できて、日本の関係者の方々もご紹介いただき親交を深められたことも財産です。
 
伝えていきたいことは2つで、1つ目は有名な話ですがケガについては、「1度やったことがあるケガが、2度目にも来る」ということです。
つまり、アスリートにとって最も大切なことは、「ケガをしたら、再発しないトレーニングをする」ことです。ケガのメカニズムに着目して、同じケガに繋がらない動き方を習得することが大切です。当たり前のようですがオリンピックレベルでもこれが大切です。

私も自分のクリニックでは、再発しないように姿勢や動きを調整するエクササイズは大切な処方箋となっており、手技による治療とともに、エクササイズは必ず処方します。ただ、ストレングの指導についてはCSCSこそ持っていますが、私の専門分野ではありませんので、トップアスリートをサポートする現場では、泉さんのような高い専門性を持つS&Cコーチに指導をお願いするわけです。
一般的なアスリートなら問題なく指導しますが、オリンピックレベルには全く関与しないようにしています。自分の診療はオリンピックに通じますが、S&Cでは通じないことを知っているからです。

伝えたいこと2つ目はこれと関連して、専門分野に特化する大切さです。
私にとっても、東京2020で泉さんをはじめ、日本のスポーツドクターの方々や、専門スタッフの方々とのネットワークが広がりました。
こうしたアスリートをサポートする専門家たちとの、肩書きや国境を越えたネットワーク、またそれぞれの専門医、専門家が、自分の仕事や超得意分野に特化して、お互いリスペクトし合える関係での情報共有や連携が大切です。
医師から始まる縦並びでなく、チームが横並びで連携をとることが今後の選手サポート体制づくりのレガシーとなり、今後世界の選手たちのサポート環境づくりに活きていくと思います。

本日は、貴重なお話をありがとうござ いました。

日本からニューヨークと中継取材

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