掲載日:2021年10月31日  更新:2021年10月31日

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オンラインでも運動効果が可視化されて自信がつくと、もっとやりたくなる

コロナ禍で世界的に注目を集め、高齢者を支えるエイジテック。Moffは、腕や脚に装着するウェアラブル端末で高齢者の動作を可視化することで、高齢者の自立した生活を支援するサービスを開発。
2017年リリースから、これまでに介護施設など約500拠点に展開している。コロナ禍をきっかけに個人向けサービスを開発したところ、
参加する高齢者の体力向上と、コミュニティ参加意欲の向上に確かな効果が見られている。

運動もコミュニケーションも楽しくなる「eコグニケアpowered by Moff」

効果が実感できるからもっと運動したくなる

 ウェアラブル端末「Moffバンド」を使った機能訓練支援サービスの「モフトレ」の特長は、Moffバンドに内蔵した加速度センサーと角速度センサーで、高齢者の動きを数値化、記録できることにある。Moffバンドとタブレットがあれば、専門家がいなくても、高齢者の動きがデータ化され、自動的にクラウドに蓄積できることから、理学療法士がいない介護施設での体力テストや、退院後のポストリハビリでの遠隔指導にも活用が広がっている。
 コロナ禍で、介護施設やステイホームを続ける高齢者の近くに、専門家がアクセスできない環境が広がる中、この機能を活用した個人向けサービスを開発した。その経緯について、土田泰広さんはこう説明する。
「神戸市がコロナ禍の社会課題を解決する最新テクノロジーを募集するという情報を得て、『モフトレ』の特長を活かして『自宅でできるオンライン介護予防サービス』として企画書にまとめて応募したのがきっかけです。2020年9月には神戸市で実証実験を行うことが決まり、78人の方々に参加いただきました。平均年齢は69歳。モフバンドでの月1回のオンライン体力測定と、理学療法士によるオンラインカウンセリング、週20クラスから選んで参加できるオンラインレッスン『モフLIVE』、参加者同士のSNSチャットサービスなどで構成していますが、歩行力、バランス力などの身体機能面で確かな効果を感じていただくことができました。この成果が評価されて2021年1月に『モフライフ』としてサービス化。そして同年10月から、神戸大学の認知症予防推進センターとの共同事業『eコグニケアpowered by Moff』もスタートします」

 実際にオンラインでの運動指導に携わった鎌倉忠司さんも、参加者の方々の変化の大きさに、やりがいを感じたと話す。
「『モフトレ』の体力テストは、介護予防の現場で行われている『開眼片足立ち時間』『タイムアップ&ゴー』『立ち座り筋力テスト』などで、自宅でも安全にできるテストを月1回実施していただきました。各テストでの動きをセンサーがデータ化して自動的に記録&分析して結果が表示されますので、以前との比較や、年齢平均との比較などもその場で見ることができて、運動効果を実感することができます。また、オンラインレッスンをミーティング形式で行うことで、指導者と参加者、参加者同士もいい距離感でコミュニケーションがとれます。さらにチャット機能では、健康関連のことだけでなく、趣味や旅行などの投稿も多く、運動効果が感じられて自信がつくことで、チャレンジ精神が湧いてくるようです。モフトレ以外の活動にも積極的に取り組まれて、夫婦仲が良くなったり、楽しみが増えたことを報告してくださる方が多いのが嬉しいですね」

介護度の低い方へのアプローチ

 コロナ禍の健康二次被害の影響により、介護認定者が増えていくことが予想されている。その一方で、介護施設では、介護給付額が高い介護度の高い高齢者へのサービスを優先する動向がある。政府も、介護度の低い方のサービスを、自費サービス化することを勧めており、今後、高齢者の自己負担額が低く、かつ利用価値が感じられるサービスが求められる。
 Moffではこうした背景から、高齢者の費用負担を極力下げるべく、サプリメントなどを販売している食品会社や、認知症保険などを販売している保険会社などとタイアップしてサービスを提供していくことを計画している。また、地方自治体での取り組みへの導入も提案していく。既に兵庫県淡路市をはじめ、いくつかの自治体で、Moffを健康教室や、高齢者の自主サークルの「通いの場」などで活用する取り組みをスタートしており、介護度が進行する前の早い段階で高齢者との接点を持つことを模索している。

高齢者との接点を持つトレーナーや インストラクターにも、Moffの活用を勧める

「Moffを活用することで、フィットネスの効果を感じていただきやすく、コミュニティやエンゲージメントの強化もできて、継続率を高められます。オンラインで繋がっていると、実際に会いたい気持ちが高まりますので、サークルやフィットネスクラブなどリアルの場で会える機会があれば、さらに有効です。運動の成果を可視化できるので、自治体や企業への健康プログラムの実施報告や、導入提案にも活用いただけます」
 高齢者に向けて広くフィットネスを届けるツールとしても活用の可能性が広がっている。

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