掲載日:2021年10月28日  更新:2021年10月28日

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【運動疫学の視点から】「座りすぎ」による健康二次被害と、その予防

早稲田大学スポーツ科学学術院教授で、日本運動疫学会理事長の岡浩一朗さんは、座りすぎによる健康リスクと対策に関する研究における第一人者。
コロナ禍による健康被害についても、1年半におよぶステイホームの呼びかけによる外出自粛で、人々の座位時間が増えていることに着目。その健康リスクと対策に関する研究を進めている。コロナ禍での「座りすぎ」による健康二次被害とその予防について、エビデンスとともに紹介する。

岡さんは、ステイホームとリモートワークが浸透したことによる、若年~中年層のメンタル面での健康二次被害にも注意を向ける。

リモートワークと座位時間の研究では、在宅勤務がある人のほうが、座位時間が長く、職種別で言うと、コロナ禍の前後で、営業職の人の就業中の座位時間が増えていることが分かっている。
座位時間が長くなることで、疲労感を感じやすく、仕事の生産性やエンゲージメントが低くなることもデータとして確認されている。
リモートワークで、座位時間が長くなることで、仕事への気力が出なくなり、さらに活動量が低下し、人とのコミュニケーション機会も減るという悪循環に入ってしまう。

こうした座位時間による健康二次被害予防には、座位行動を中断する頻度を高めることが重要である。
この中断行動は、低強度の身体活動でも、中等度以上の身体活動と遜色ない効果が得られることが実験研究で分かっており、「強度より頻度」に焦点を当てて、「座りっぱなし」の状況をなくしていくことが重要である。

近年では、スマートウォッチなどが、ここに着目した機能を搭載している。Apple Watchの場合、1時間に1分の身体活動が促されるようになっているが、本来は、30分ごとに3分程度の活動を入れることが望ましいという。
ただ、「1時間に1分」というメッセージは、「1分間ならできそう」と感じやすく、行動科学的な視点から見ても行動が生起しやすいという。

リモートワーク中心の新しい生活様式では、「強度より頻度」の重要性を啓発して、就業時間中でも短時間のオンラインレッスンの活用を促すことも、健康二次被害予防として有効だと言える。

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