掲載日:2021年12月26日  更新:2021年12月27日

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【フィットネス業界】2021年までの総括と2022年の動向予測

2020年2月から続くコロナ禍も、日本では2021年秋ごろから収束に向かってきているが、フィットネス業界の事業者がこれまでに負った経営的なダメージは簡単には払しょくできない。
個々の工夫と努力に加えて、業界一丸となって「FIAフィットネス復活!キャンペーン」などへ取り組むことで再興を実現したい。
2021年の同業界を振り返ったうえで、2022年以降に同業界事業者に求められる経営上の視点を示す。

2019年にフィットネス業界の市場規模は、およそ5,000億円となった。しかし、2020年初頭、コロナ禍が日本のフィットネス業界を襲うことになる。
安倍晋三首相(当時)の「スポーツジムはクラスター源」「スポーツジムは不要不急の施設」といった科学的根拠のないイメージ的な発言に端を発し、各都道府県の首長やマスメディアなど多くの関係者がこれに同調。
フィットネスクラブを感染リスクの高い場所と特定したことによって、風評被害を受けることになり、さらに半ば強制的な「自粛要請」によって多くのクラブが休業に追い込まれた。

結果、2020年の市場規模は、前年対比およそ35%減の3,196億円、会員数は、同およそ23%減の425万人(*休会者を含む)と4年前の水準に戻ってしまった。
客単価も前年対比で15%ほど低下、さらに利用者数も同およそ36%減と、惨憺たるものとなった。 倒産する企業や閉鎖する施設もあったが、当然のことながら、政府や自治体は十分な補償などしない。事業者たちは、ほぼ自力で、再生していくしかなかった。

各社は、とりわけ大きく減少したフィットネス部門のマイナスを補うために、オンラインフィットネスや子ども向けスクールの導入、ジムの24時間化による若年層の集客強化などを図るが、いまだにフィットネス部門は2019年比で2〜3割減の会員数となっている。
この間に生き残りのために内部留保などからキャッシュを捻出、さらに、大胆にコスト削減も実施していることから、余力もそれほどあるわけではない。とりわけ中小事業者は、危機感を抱いていることだろう。

コロナ前からエンゲージメントが醸成されていた比較的小規模の業態は、回復も早く、2023年には2019年の水準にまで会員数を回復させることができると予測する事業者もある。だが多くは、事業的にも、組織的にも、かつての元気はみられない。
経営者は組織の知を結集し、最終的には自己の責任において意思決定し、企業の存続を図らねばならない。
こうした変化の時代こそ、経営者らのリーダーシップとマネジメント力、そして現場最前線でサービスを提供する従業員らの真価が問われよう。

では、2022年以降にフィットネス業界の事業者に求められるであろう重要な視点とは何
か?
フィットネス事業者は、コロナ禍の影響で落とした業績を、いかに回復させ、再生していけばよいのか。
従来型のビジネスモデルを大きく変えたり、場合によっては新しい業態・サービスを創造したりしなければならないだろうが、具体的にどう改革、改善していけばよいのだろうか?

日本という限られた範囲から情報収集して戦略的方向性や戦術的要素を考えようとするのではなく、視野を広げて日本よりもコロナ禍が深刻だった欧米など世界の各地域のフィットネス事業者やこのコロナ下で業績を伸ばした、あるいは経営に苦しみながらも独自の取り組みで顧客の支持を得た他業界の事例などからも広くヒントを得たい。
どうすべきかプランを考え、それぞれが何をやるのかを決め、それらを組織内で共有し、一体となって取り組んでいくことが大切になるだろう。

以下に、これからフィットネス事業者に重要となる5つの取り組みを示したい。

①運動習慣とコミュニティ活動維持のため、 フィットネスの本質的な価値の訴求を

私たちは、なぜフィットネス事業に就いているのだろうか?つまり、我々の使命とは何か?こうした根本的な問いを突き詰めて、考えたことはあるだろうか?

地域の生活者や勤労者が、スムースに生活シーンのなかにフィットネスやスポーツを取り入れ、それぞれの人生を豊かにしてもらい、そのことによって世界の健全な発展に貢献することが、我々フィットネス事業に携わる者たちの使命・志ではないのか。
ならば、安全・安心の環境を用意し、フィットネスの習慣化をサポートしていくことに注力しなければならない。

過剰に、政府や自治体、親会社、一部のクレーマーを気にして、空気を読んだり、同調したり、忖度したりすることなく、自分自身の使命・志に忠実に、意思決定し、行動することが大切だ。

②引き続き、最大限の安全対策と財務対策を

フィットネス事業者は、引き続き、(一社)日本フィットネス産業協会(略称FIA)による「新型コロナウイルス感染拡大対応ガイドライン」などを遵守して、最大限の安全対策を実施すべきだ。

日進月歩で、新型コロナウイルスに有効な設備やシステム、薬剤などが開発されてきているので、フィットネス事業者は、こうした情報を日々チェックして、クラブ利用者の安全性を担保する環境づくりをするとともに、その有効性を実感してもらえるようなコミュニケーションを展開することが求められる。

特に、感染が起こる確率が高いスタジオやロッカールーム・浴室の除菌・抗菌対策は重要になる。
感染防止には、会員の協力も欠かせないため、経営者や支配人などが、直接、館内放送などで呼びかけることも大事だ。

③改めて、マーケティングを考え直そう

「コロナ下での『フィットネスクラブ』に関する実態調査レポート」(オリコン顧客満足度®調査)などいくつかの調査では、退会者の再利用意向はそれなりに高いものの、直近の状況では、残念ながら一部の会員は、フィットネスクラブから離れていて、しばらくは戻る気配がない傾向が伺えた。

退会した会員や休会中の会員にもクラブの魅力や安全・安心の根拠を示すなどして復帰を呼びかけることも大事だが、同時に取り組んでいくべきことがある。今在籍している会員のなかで、エンゲージメントが高いファンの方に対して、より付加価値の高い商品やサービスを提供して満足を得るとともに、客単価の向上を実現し、以前よりも少ない会員数でも、売上高や利益をきちんと確保できるようにすることだろう。

こうしたファンの方に、提供する商品・サービスとしては、パーソナルトレーニングやリハビリ系プログラム、スモールグループトレーニング、各種スクール、アウトドアフィットネス関連のイベント、クラブインクラブなどのサークルやコミュニティ、プロテインなどのサプリメント、水素水、レンタルウェアやレンタルロッカー、(自宅から参加できる)オンラインフィットネスサービス、ジムの24時間営業化、より付加価値の高い会員種別などがあるだろう。

また、エンゲージメントが高いファンと呼ぶまでにはいかないまでも高い期待感をもって入会してくださった新規入会者に対しても、熱量の高いファンになっていただけるような仕掛け、仕組みを構築・運用していきたい。

例えば、入会から数ケ月の間にスモールグループで、フィットネスを習慣化してもらうための特別な教室(有料)を提供したり、デジタルを活用してCRMのシステムを構築し関係性を強化したりするなどの取り組みが想定される。
 
好事例としては「LEALEA フィットネス&スパ レアレア 東戸塚店」(株式会社ラストウェルネス)の取り組みがよく知られているが、最近では、「メガロス」(野村不動産ライフ&スポーツ株式会社)も“新規入会者限定の担当者制グループオリエンテーショントレーニングプログラム”ともいえる「フィットネスジャーニー」(有料)を各店で導入し、成果を挙げている。

注意すべきは、どんなマーケティングをしても、新規入会者に対して、健康づくりの習慣をつけていただく対応をきちんと整えていないクラブは、逆にすぐに離脱する会員を増やしてしまうことになりかねないということだ。

特に、総合業態のクラブは、新規入会者の「カスタマーサクセス」を念頭に、備えているアイテムやプログラム・サービスをきちんとその文脈に合うように紹介し、できれば一緒に体験して魅力を分かっていただけるようにすることが大切になるだろう。

④デジタルを活用したサービスデザインを

例年、アメリカスポーツ医学会(ACSM)が、世界中で活躍する数千規模の健康および
フィットネスの専門家に調査し結果をまとめ発表している「フィットネストレンド」レポートでは、コロナ禍を反映して、過去15年間の調査のトップ20のトレンドとその内容が大きく変わった。

2021年に新たにトップ20にランクインしたトレンドは、1位のオンライントレーニング
(2020年は26位)、6位のバーチャルトレーニング、12位のモバイルエクササイズアプリなどであった。
デジタルテクノロジーを使って、ユーザーがどこにいようとも、簡単に、希望するエクササイズを快適に楽しめる方向に変わってきている。

フィットネス事業者は、既存の会員も、非会員もエフォートレスで、サービスにアクセスし、利用できるようにカスタマージャーニーをデザインしていくことが重要になる。
リアル店舗をもつ既存のフィットネス事業者は、O2O(*Online to Offlineの略。WEBサイト、インターネット広告、SNSなどのオンラインで広く情報発信をし、集めた見込み客を実店舗であるオフラインへと誘導して入会・購買を促す施策)やOMO(Online Merges with Offlineの略。『アフターデジタル』などの書籍が示す、ネット上とネット以外の店舗などの垣根を超えたマーケティング概念)を実現することが当然の時代となってきている。

今後は、フィットネス事業者が、「カスタマーサクセス」にコミットし、「カスタマーエンゲージメント(相思相愛)」を醸成しながら伴走して、会員がフィットネスをスムースに生活に取り込め、豊かな人生を送れるようにサポートしていくことが強く求められる。

⑤団結しよう

組織のリーダーは、現在の経営課題を明確にし、もっと広く社内外の関係者から意見を引き出し、自らも積極的に発言して、コミュニケーションを活発に交わし、組織を正しい方向に導く決定を行い、多くの生活者にフィットネスの真の価値を伝え、適切に行動してもらえるようにサポートしていくことが大事になる。
そのためには、最前線で顧客にサービスを提供するスタッフを大切にしていくことが、これまで以上に重要になるだろう。

それには、とりわけリーダーが重要となる。思考停止せず、学習を怠らず、きちんと現場を見て自分の頭で考えて、意思決定し、発言し、行動し、ともに団結して前進し、フィットネスを国民の誰もがしたいと思えるものにしていきたい。

FIAが、現在「フィットネス復活!キャンペーン」を展開中で、加盟企業各社が、FIA製作の動画を自社HPにアップし、フィットネスを啓発しているが、それだけではキャンペーンの効果は限定的になってしまう。

関係する各人、各社が、それぞれに創造的に考え、(少なくともキャンペーン期間の2022年3月末日まで)粘り強く継続して取り組んでいくことが大事になる。
本当は、それ以降もレガシーとして使える、(この間に、身体に健康二次被害をどのくらい被ったのかがわかる)フィットネステストや健康二次被害をリセットできるようなプログラムが開発でき、以降100年くらい使える、フィットネス業界版の「ラジオ体操」のようなものになって、国民の間に定着・浸透していくとよいと思う。

同キャンペーンについてはまず、フィットネスクラブの経営者や支配人、インストラクター・トレーナーをはじめとした関係当事者のみなさんこそが中心になり、多くの人々にフィットネスの価値に気づいてもらい、フィットネスに取り組んでもらって、それを大きなムーブメントにしていこうとすることが大事になる。ここからが本当のスタートだ。

傍観しているのではなく、まず自ら、積極的に動きを起こそうとすることが大切だ。特に、SNSを活用する場合は、自分のアカウントから、自分の体験や思いを自分の言葉で書いて伝えることが大切になる。そうすることによって、自身のすぐ近くにいる知人・友人たちに響いて、フィットネスサービスへの認知が高まり、参加してもらえるようになっていく。

また、ファンと呼べるような熱量の高い会員さまや自身のすぐ近くにいる関係者の目に触れると、拡散していただける可能性も高まる。

例えば、自分が運動するたびに、運動の記録や爽快感を示すような言葉とともに、ハッシュタグをつけて、自クラブのブランド名と「いのち輝くフィットネスへ」といった言葉を添えると効果的だろう。

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