掲載日:2023年02月01日  更新:2023年02月01日

NEW

フィットネス・スポーツ業界のDX研究①ワイズファンクショナルムーブメント

姿勢評価と動作評価をデジタル化して ファンクショナルトレーニングの効果を数値化

介護予防運動に革新

株式会社ワイズ・スポーツ&エンターテイメント(以下、ワイズスポーツ)が運営する高齢者デイサービス「ワイズパーク」は、一般社団法人日本デイサービス協会が選ぶ「2022年デイサービス5選」に選出された。姿勢と動作測定とメニュー作成をAIがサポートし、介護予防運動としてのファンクショナルトレーニング効果をデータ化した革新性が特に評価され、応募1,191事例のうち5例に選ばれた。姿勢評価と動作評価のデジタル化には、SportipProをベースに、ワイズスポーツが開発したファンクショナルムーブメント評価システムを搭載。評価によるエラーパターンごとの科学的根拠とコレクティブ・エクササイズは社内研修を通して学習し、デジタル評価を有効活用しながら、リアルな指導の成果を高めている。

SportipProでは、静的な立位・座位姿勢、柔軟性、歩行解析、トレッドミルでのランニング解析、ジャンプ動作解析などが行える。そこにワイズスポーツで10年以上前から手動で行ってきた6つの動作から評価するワイズファンクショナルムーブメント解析のエラーのパターン化を搭載した。これまでワイズスポーツでは、身体のランドマークになる場所にシールを貼り、静止画や動画を撮影して手動で線や角度を付け加えて、経験豊富なトレーナーが、トレーニングメニューを作成する方法をとっており、相応の手間と、トレーナーの育成に時間がかかっていた。このシステムが開発されたことで、画面の前で6つの動きをするだけで、自動でAIがスティックピクチャーを作成、関節可動域や、動きの角度、左右差をはじめ、姿勢や動作をデータ化して表示、姿勢や動作のエラーもリアルタイムに表示され、そのエラーパターンの説明が表示される。

これにより、その日のエクササイズ前後での胸椎回旋角度の変化や、トレーニング開始数ヶ月後のスクワット動作などでの動作の改善が可視化され、姿勢や動きの評価やトレーニング効果測定と評価が標準化された。専門性が高く、属人的になりがちな評価をAIがサポートすることから、トレーナーの指導経験を問わず、質の高いトレーニング指導ができ、確実な成果にも繋がっている。成果がデータで示せることで、介護予防としての有効性も定量的に示すことができ、利用者にもケアマネジャーにも満足度と評価が高まっている。

筋力計測のDXで、筋トレも革新

ワイズスポーツでは、筋力測定と筋力トレーニングにも革新をもたらすDXの取り組みを進めている。同社が開発・販売している油圧式マシンMOVE★Yのうち、「ニー・エクステンサー&フレクサー」(膝の屈曲伸展)と、「トリプルエクステンサー」(スクワット)に圧センサーをつけて、トルク値(回転させる力とスクワットの力)を計測、スマホ上にリアルタイムで表示するアプリを開発した。これまで、筋力の測定には、数千万円する大型の測定器で、研究者など熟練した人が計測する必要があったが、このMOVE★Yの計測器により、簡単に、安く、誰でも計測することが可能となった。

価格は、大型の筋力計測器の約10分の1で、計測の必要がないときは、通常のマシンとして利用できる。計測器はモバイルバッテリーを使用したのでコードレス、どこでも計測が可能となる。これにより、アスリートの術後の筋力の回復度や、介護予防などでの高齢者の立ち上がりの筋力測定などに、広く活用できることになり、トレーニング効果に新たな知見が得られることになる。特に、重心の高さごとの筋力が出せることは世界的に見ても革新的だと、同システムの開発者であり、アスレティックトレーナーとしても多くの経験を持つ理学療法士の松田直樹さんは説明する。

「例えば、同じバレーボールの選手でも、アタッカーは膝を深く曲げたところからジャンプするのに対して、ミドルブロッカーは膝をあまり曲げずに跳びます。これまで筋力はフルスクワットで評価していましたが、MOVE★Yの筋トレ測定器を使えば、重心高がどの高さで、どのくらいの筋力を発揮できるかを測定することが可能になり、より効果的なトレーニングが行えることになります」

DXによる業務の効率化とトレーナーの育成スピードを高め、新分野へ進出

DXを積極的に進めるワイズスポーツでは、デイサービスの計画書をはじめとした帳票類や、加算業務のデジタル化を進めることも計画している。トレーニング指導におけるDXについて、ワイズスポーツ代表の山本晃永さんはこう話す。

「トレーニング指導では、測定結果に対して、どのようにトレーニングを進めていくかをクライアントと話しながら実践し、効果を出していくことがトレーナーとして最も価値が出せる部分。測定や帳票などは、デジタル化することで、トレーナーが関わる部分での価値を最大化することができます。医療業界を参考に、RPA(ソフトウェア型ロボット)の導入に向けても準備を進めています。DXへの投資には、近年さまざまな補助金が出ていますので、積極的にアイデアを形にしていくべきだと考えています」トレーニングのDXにより、新たな分野への進出も視野に入れている。札幌のワイズパークでは、近隣にある恵佑会病院と連携して、がん再発予防のトレーニングを開発、2023年1月から提供をスタートした。

「運動することで、がんの再発率が下げられる」というエビデンスをもとに、病院と情報連携しながら予後や診断後に運動を行っていく。「医療と介護、またフィットネスとの連携」は日本の課題といわれている。開発してきた姿勢や動作のAI評価や筋力評価のデジタル情報は、連携の切り札になると考えている。

がんサバイバーの方に適したデイサービスやパーソナルトレーニングなどのサービスを構築することと、病院の医師や理学療法士と情報連携するためにDXを有効活用することで、予防医療や運動療法の分野で競争力の高いサービスが提供できることになる。

9 件中 1-9

  • 1

新着

同じカテゴリの記事