―世界でウェルネス市場が急成長しています。 まずこの動きをどう思いますか?
世界の成長に伴い、健康的な心身の維持がますます求められています。『レジャー白書2024』によると、余暇重視派は2009年の50.5%から2023年には65.7%に増加しています。これに対応して、事業者はウェルネスをテーマに新しい余暇サービスを提供しています。日本では「国内観光旅行」が増加し、ウェルネスツーリズムやスパに関連するサービスも人気です。健康を目指す体験型サービスの需要は、先進国全体で見られる傾向です。
―日本のフィットネス市場の動きはどうでしょうか?
日本のフィットネス市場は、新興勢力が健闘し、従来の事業者を抜いて市場構成比が変化しています。しかし全体的には停滞感があり、コロナ前の規模には届いていません。既存事業者は、フィットネスを「体育」の延長で捉えたマーケティングから抜け出せていない可能性があります。市場は構造転換しているため、既存事業者も変革が必要です。
―今後、日本のフィットネス市場が回復・再成長するために、世界のウェルネス市場の動きからどのようなヒントが得られるのでしょうか?
ウェルネス市場では、顧客の潜在的な欲求である「インサイト」を把握することが重要です。インサイトとは、顧客の深層心理にある未言語化の欲求で、これに対応しないと成長は難しいです。フィットネス業界の例として、RIZAPやchocoZAPのように、表面的なものではなく、深層にあるニーズに応えることが求められます。
インサイトには、顧客インサイト、先行者インサイト(異業種からの学び)、自社インサイト(自分が情熱を持てる事業)の3種類があります。これらを把握し、戦略を立てることが成長に繋がります。
―その戦略を実現し、成果を得るために重要な要素は何ですか?
要するに、組織の成功にはリーダーシップと企業文化が重要です。戦略がいくら優れていても、従業員とパートナーが内発的な動機で仕事に取り組まなければ、持続的な成長は難しいです。全員がリーダーシップを発揮し、共通のビジョンや目的を持ち、対話を通じて実現方法を考え、実践することが必要です。