掲載日:2023年05月29日  更新:2023年05月23日

NEW

【特集】スポーツ健康まちづくり 最前線

ポストコロナの地域スポーツ戦略へ

日本各地で行われている「スポーツ健康まちづくり」関連のプロジェクトにおいて、地域のスポーツ関係者のみならず、フィットネス事業関係者や、運動指導者が参画して、持続可能な事業に繋げることができる事例が増えてきている。
スポーツ地域マネジメントの視点から、持続可能なまちづくりに向けた課題と戦略について、「スポーツ地域マネジメント」を主要な研究テーマとしながら、「スポーツツーリズム」や「観光振興」「都市再生」などにも詳しい大阪体育大学学長、原田宗彦さんに聞いた。

インナー施策とアウター施策

まず、スポーツを活かした持続的なまちづくりを目指すには、図に示したように、地域内での人材育成や環境整備などの取り組み(インナー施策)と、自然や文化など地域資源を活用して、地域外から誘客する取り組み(アウター施策)の両方を展開する戦略的なマネジメントが求められます。
日本において、スポーツを取り巻く施策が転換期を迎えたのは、2013年に、2020東京五輪大会の開催が決まったことにさかのぼります。2015年にスポーツ庁が設置され、各省庁において縦割りで進められていたスポーツ行政が一本化されました。
また、2003年の指定管理者制度の創設以降、公共施設の民営化が始まり、スポーツ施策の民営化も進められてきました。今後、インナー施策、アウター施策ともに、ますます行政と民間と連携を強めていくことが求められます。

出典:原田宗彦「スポーツ地域マネジメント」学芸出版社、2020年

ポストコロナの地域スポーツ戦略

2014年に制定された「まち・ひと・しごと創生法」を受けて、2020年からの第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」において、「スポーツ・健康まちづくりの推進」が主要な取組の一つとして示されたことで、スポーツを通じた地方創生の取り組みが増えました。
地方創生のための国からの支援のひとつである「地域創生推進交付金」や、「地域おこし協力隊」の制度を、スポーツまちづくりに活用する事例も増えています。スポーツまちづくりでは、持続可能な仕組みづくりが重要ですが、地方創生の取り組みとして位置づけることで、さまざまな支援を活用したダイナミックなチャレンジが可能になります。
 また、スポーツ振興施策とする場合は、教育委員会やスポーツ振興課との連携になるのに対して、地方創生施策とする場合は、地域経済や観光、福祉をはじめ、複数の課を横断した取り組みになるため、多様な行政側の担当者の参画が必要になりますが、これによって、インナー施策とアウター施策を有機的に組み合わせた施策の実現が可能になります。
ポストコロナとなる2023年に注目される動向としては、インナー施策として学校部活動の地域移行の取り組みがある一方、アウター施策では、観光庁が支援するインバウンド再生事業によるスポーツツーリズムの推進にも大きな可能性が秘められています。
より広い関係者と連携しながら、官民連携の新しいエコシステムを創り、持続可能なスポーツ健康まちづくりを実現させていきましょう。

原田宗彦さん

大阪体育大学学長、日本スポーツツーリズム推進機構(JSTA)会長
日本スポーツマネジメント学会会長、ペンシルベニア州立大学健康・体育・レクリエーション学部博士課程修了(Ph.D.)、スポーツ庁アーバンスポーツツーリズム研究会座長などを務める。早稲田大学商学学術院ビジネススクール(WBS)客員教授

9 件中 1-9

  • 1