掲載日:2021年04月18日  更新:2021年06月23日

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NEXT AWARD 2019 トレーナー・オブ・ザ・イヤー

Mind & Body部門 最優秀賞 本橋恵美さん 一般社団法人 Educate Movement Institute 代表理事 (株)E.M.I 代表取締役

2019年、ヨガやピラティスの運動療法としての機能価値を、数々の論文や学会講演などを通じて医療従事者向けに伝えた本橋恵美さん。身体をゆっくり丁寧に動かすことで、心の状態も調整できるマインド&ボディエクササイズの価値に加えて、モーターコントロールに焦点を当てて脳と身体をつなぐ効用へと、その価値を発展させた。ヨガやピラティスの新たな展開への可能性を高めた功績が注目された。

アスリートサポートに必要なスポーツ障害の知見

近年、ヨガやピラティスは、アスリートのパフォーマンスを高めるエクササイズとしても注目され、トレーニングに採り入れるアスリートも増えている。

2019年に日本を沸かせたラグビーワールドカップに出場する選手たちの多くも、ピラティスを定期的に行っていた。その要因に、ラグビー先進国の欧州やオセアニアでは、運動療法としてのエクササイズを理学療法士が開発することが多く、ピラティスがドイツ軍人のリハビリテーションとして生まれた経緯から、アスリートにもリハビリとして広く活用されてきていることがある。

本橋恵美さんがアスリート指導に深く携わることになったきっかけも、ラグビー選手たちへのピラティス指導だった。本橋さんは、フィットネス指導者としてのキャリアを、グループエクササイズインストラクターとしてスタートさせているが、2003年にいち早くピラティス指導者の認定を受け、パーソナル指導もスタートさせていた。2007年に、ラグビー元日本代表の方が、世界のアスリートが注目するトレーニングに興味を持ち、当時日本ではまだあまり知られていなかった「ピラティス」を導入したいと本橋さんに声がかかったのだ。

時を同じくして、本橋さんが担当するクライアントからの紹介で、様々なスポーツのアスリートへの指導機会も増えていた。アスリートとの接点が増えるにつれて、自身の力不足を痛感することも増えたと振り返るが、それがメディカル分野の勉強にのめり込むきっかけになったという。

「アスリートは目的意識が高い分、不調を抱えたときの不安も大きく、世界のアスリートに支持されているピラティスとはいっても、質問を多くいただくことになりました。『ACL術後2ヶ月ですが、どういうリハビリが良いですか?』とか、『椎間板ヘルニアになった原因は何だと思いますか?』とか。その時、すぐに答えられない自分に不甲斐なさを感じることも多く、スポーツ選手をみるなら、スポーツ障害の知識が必須だと痛感しました。そして、医療従事者向けの医学書を読むようになり、学会にも積極的に参加するようにしました」

運動療法としてのヨガ・ピラティスの可能性

医学書を探すようになって気づいたのが、運動療法についての記事がワンパターン化していること。また、リハビリや障害予防についての学びを深めるほど、ヨガやピラティスをリハビリに活用することで、より効果的な運動療法ができると感じたことだった。

こうした気持ちが高まっていた2014年。当時トレーニングのサポートをしていたアスリートが、肩の手術をすることになり、それまで学んできたことを活かして、リハビリもサポートしたいと、医師の診察から手術、理学療法士によるリハビリまでを見学させてもらいたいと相談。幸い了承が得られ、一連の経緯を見守った。その経験は衝撃的だったと話す。

「それまでは机の上での勉強でしたが、実際に立ち会うと、診察から術後まで医師が真摯にクライアントに向き合う姿や、手術に臨むアスリートの不安な気持ちを目の当たりにして、トレーナーとして、最適な運動療法を伝えたいと、覚悟のような強い気持ちがわきました。それと同時に、ケガを再発しない、ケガを予防するためのコンディショニングの重要性や指導も伝えられるようになりたいと感じたのです」

これをきっかけに、手術と外来の見学機会を重ねるようになる。患者さんに同席させてもらい、一緒にレントゲン画像を見ながら医師の説明を聞き、画像初見への理解も深めていった。そして、ヨガやピラティスでの動作評価と、画像診断を合わせてその障害をみることで、障害がどこに起きているのか、その障害が起きることになった根本的な原因がどこにあるのかを特定できるようになっていった。

論文執筆で鍛えた伝え方


医師たちとの接点が多くなるにつれ、病院やクリニックで運動療法の研修をする機会が増えていった。そしてその頃から、医学書の執筆依頼も来るようになる。医学書は、専門用語が多く、書き方にも独特のルールがある。本橋さんはそれまで論文を書いた経験もなく、書く自信もまったくなかったというが、自身の性格上、引き受けることで自分を追い込めると感じて、依頼にはすべて「やります」と答えることにした。当初は相当なストレスだったと言うが、文献を探し、数々の論文を引用するうちに、調べたり、書いたりすることが楽しくてしょうがなくなったという。気づけば、数年間で30本あまりの論文を書き、それらの論文が認められて、医師が集まる学会の特別講演で登壇機会も得られるようになっていった。

運動療法の視点から見たピラティスとヨガの違い

現状、メディカル分野の専門には、リハビリとして開発されたピラティスのほうが受け入れられやすい。だが本橋さんは、ヨガにも運動療法としてのモーターコントロールに効果的なエクササイズが多いことから、現在までに「Athlete Pilates AP TM」と「Core Power Yoga CPY®︎」として、運動療法としてのピラティスとヨガを、それぞれにリハビリからコンディショニングに活用できるプログラムとしてまとめている。

「ピラティスは、脊椎の分節運動を丁寧に行うため、体幹部へのアプローチに有効です。一方ヨガは、裸足で立位で行うポーズが多いため、足裏の固有受容器への刺激が得られ、モーターコントロールのための中枢神経の支配を効果的に高めることができます。また、運動療法には“、モビリティファースト”という原則があり、動くべき関節の適切な関節可動域を獲得してから、全体の動きを安定させていくという順番が大切です。その意味でも、ヨガのようにモビリティを高め、スタビリティが求められるエクササイズは、医科学的に見ても有効です。ヨガというと、宗教色の強さや過度に可動域を超えたポーズというイメージを持たれている医療従事者も多いので、論文を書きながら学んできた医科学的な視点からのコミュニケーションを大切にしています」

現在は、両プログラムを、メディカル分野の専門家から、フィットネス分野のヨガ・ピラティスのインストラクターまで、広くセミナーや養成コースを通じて詳解している。

今後、さらに運動療法として活用されることを目指して、これらのエクササイズの有効性を示すエビデンス収集もスタートしている。埼玉医大と共同研究で、CPYの38ポーズを筋電計をつけて行い、グローバル筋が稼働する前に、深層のローカル筋から動かせるようになることの検証を目指している。

「ヨガについては特に、ヨガによるケガで整形外科に相談に来る人もいて、エクササイズとしてのヨガに否定的なイメージを持っている医療従事者も少なくありません。ヨガへの信頼回復が必要な場面があることも現実です。ただ、医学の勉強をするほど、ヨガやピラティスが運動療法として貢献できる可能性が大きいことを感じます。メディカル分野に接点を持つことに敷居の高さを感じているヨガやピラティスの指導者も多いですが、ぜひ一緒に学びを深めて、その価値を伝えていきたいですね」

本橋恵美さん Emi Motohashi
一般社団法人Educate Movement Institute代表理事(株) E.M.I代表取締役
リハビリ・障害予防や機能改善を目的としたコンディショニングトレーニングメソッドを
考案し、患者からトップアスリートまでをサポートする。現在ラグビーセブンズ日本代表のコンディショニングを担当。病院での研修やヨガ・ピラティスの養成コースを全国で開催し、スポーツ医科学に精通したトレーナーの育成事業を展開している。http://www.motohashiemi.com

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整形外科学用語集
論文を執筆する際に正確な表記が求められるため、手放せない

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①専門医(身体の部位別)の外来で画像の見方を学び、患者様とのコミュニケーションスキルにも感銘を受ける。

②初めは鏡視下手術は、はじめ何が映っているか全く不明だったが、今では順番や手術用具まで把握できるようになっている。

③執筆した論文は30を超える。毎回プレッシャーを感じながらも書き終えた時には多くの学びと達成感を得ている。

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