国家資格であるフィットネスクラブ・マネジメント技能士1級認定者のうち、唯一のフリーインストラクターである芦田天文子さん。コロナ禍での業界動向と環境適応について、経営者・運営者の視点から考える一方で、フリーインストラクターの厳しい実情も肌で感じているという。
芦田さん自身は、企業フィットネスや、シニアサークル指導、出張パーソナル指導や、小規模ジムのスタジオアドバイザーなど、多様な業務でコロナ禍でも活躍できるフィールドを拡げてきているが、業界全体を見ると、フリーインストラクターの働き方は大きく変わったと話す。
「私の周りでも、コロナ禍でフィットネスクラブでの仕事が激減したことを機に、違う仕事を副業として持つ人が増えました。ピアノの先生や野菜の販売員など、仕事の内容は様々ですが、収入の5割以上がフィットネス以外の仕事になったという人も増えています。この動向は決してマイナスではないと捉えています。視野が広がり、インストラクターとしての強みを活かして働くことで、サービスの掛け合わせで新たなビジネスアイデアが生まれるチャンスも出てきます。フィットネスクラブの仕事は戻らない前提で、新しいフィールドに踏み出すことが大切だと思います」
クラブでの仕事が激減したときにオンラインレッスンを始めた人も多かったものの、オンラインフィットネス市場が一気にレッドオーシャン化したことで、集客もしづらくなり、業務委託でのレッスンフィーも1本1,500~2,000円程度まで下がってきているという。
クラブが再開した後も、感染予防のガイドラインにより、レッスンの本数や分数が減る中、バーチャルレッスンやクラブスタッフによるプレコリオプログラムが増え、業務委託でのレッスン市場は縮小した。フリーインストラクターにとっては、この市場が戻ることは期待せず、新たなサービス提供の場を開拓することが、2022年以降のキャリアづくりのカギになると芦田さんは説明する。
現状では、フリーインストラクターの働き方に2つのトレンドが見られるという。一つは、オンラインレッスンで培った経験を活かして、自身の得意分野で差別化したオンラインサロンやサークルを運営すること。もう一つは、ウィズコロナで外出を控えている高齢者への運動指導サービスに軸足を移していくことだ。
「フィットネスの仕事で、第2・第3の柱をつくる場合、現状では、健康運動指導士の資格を持っていると仕事の幅が拡げやすいと感じています。企業の仕事や公共の仕事でも、募集条件として要項に書かれていることが増えています。また、コロナ禍でも理学療法士や治療家など、身体の機能低下に的確な運動指導ができる人は仕事がむしろ増えており、それを考えると、フィットネス指導者としてより本質的な指導ができることの重要性が今後益々高まると考えられます。メディカル分野でのエクササイズ指導が学べる勉強会に参加したり、企業フィットネス分野では『健康経営エキスパートアドバイザー』という資格があり、健康運動指導士を持っていると企業との接点が得られやすくなります。他にも、高齢者で疾病を持つ方へのパーソナルトレーニングなども市場が拡大しています。コロナ禍をきっかけに健康ニーズが高まる市場で、グループインストラクターの強みを活かせるフィールドも広がっています」
掲載日:2022年01月12日 更新:2022年01月26日
スタジオレッスンは戻らない前提で、 第2・第3の柱をつくる
フィットネスクラブ・マネジメント技能士1級認定者でありフリーインストラクターである芦田天文子さんに、今後のフリーインストラクターとしての働き方のトレンドについて伺った。
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