掲載日:2023年02月08日  更新:2023年02月07日

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フィットネス・スポーツ業界のDX研究③hacomono

フロント業務のDXと、データにもとづいたサービスのアップデートにより、継続率と収益率を高める

管理業務を効率化して、専門性を活かしたサービス強化で体験価値を高める

hacomonoは、2013年の創業当初、ブティックスタジオの予約システムにおけるUXの高さが注目され、以来、スタジオやマイクロジム、大手フィットネスクラブまで広く導入されるに至っている。3ヶ月ごとに100以上の機能改善や追加がされるという開発力で、フィットネス施設のフロント周りの業務を、ほぼすべてDXできる機能を備えている。コロナ禍で、ジムやスタジオでのソーシャルディスタンス確保や、利用者が追跡できるようにと利用の予約制が浸透したことも、フィットネスクラブがDXを進める推進力となった。フロント業務のDXによって、経営効率が特に高められる部分の一つが、入会手続き前後のオペレーション。以前は、体験予約や、ニーズ把握のためのアンケート、入会時の必要書類作成や、決済の手続きなど、書類作成や管理が煩雑で、そこに、人的なリソースもかなりとられていた。

ここが、体験予約時から、各種の情報やアンケートなどもデータとして蓄積されていくことで、入会の手続きも、オンラインで1~2分で完了できるようになっている。こうした手続きにかかる時間と手間から解放されることで、本来のフィットネス指導やコミュニティづくりに専念できるようになる。蓄積される顧客データに基づいたサービス提供で、体験価値を高めることができるようになる。さらに、クラブの付帯収入になる、レンタル品や、水素水やプロテイン、パーソナルトレーニングなどの契約も、デジタルで管理され、館内のQRコードで利用を管理することもできるようになっている。クラブの売上や利益率向上にも繋げやすく、キャッシュレス決済に移行することで、管理や集計、経営指標の管理も、手間なくタイムリーに行えることになる。

入会初期2ヶ月の予約頻度が6ヶ月後の継続率に相関する

株式会社hacomono代表取締役の蓮田健一さんは、これまでに多くのジム、スタジオ、フィットネスクラブを見てくる中で、DXの進め方についてこうアドバイスする。「フィットネス事業の場合、デジタルテクノロジーそのものがサービスの価値を生み出して成功している事例は世界的に見てもありません。同様に、hacomonoを導入しても、競争力を高める店舗もあれば、苦戦が続く店舗もあります。つまり、デジタルテクノロジーそのものはサービスの価値を高めるものではなく、あくまでツールとして活用するという視点でDXを進めることが肝要です。これまでのデータでわかってきていることは、入会初期2ヶ月の利用頻度が、6ヶ月後の継続率に相関することです。入会前後のオペレーションを適切に設計することで、DXの効果を大きく高めることも可能です」

hacomono導入による成功事例として、2020年からスタートしたDr.Stretchの「WECLE」での運用がある。同チェーンでは、入会予約から、入会後1~2ヶ月までの顧客とのコミュニケーションに、hacomonoの機能をフル活用している。オンラインでの体験予約の時点で、性別と年齢、居住エリア、利用時間などを入力してもらう。その情報をもとに、利用時にスタッフがお客さまの課題やニーズをヒアリングし、身体の状態も含め、お客さまの情報をすべて記録として残していく。入会時には、1ヶ月のプランを作成し、定期的な利用をお客さまと一緒に計画するとともに、毎回利用時には、次の予約日時を確認し、習慣づくりをサポートしていく。

さらに、毎回の利用時にも、スタッフが問いかけを通じて、身体の状態の変化や、生活リズムなどまでを把握しデータに残して活用していくことで、お客さまが来館するほど、きめ細かな、パーソナライズされた声掛けやサービスの提供が可能になる。WECLEに通うほど、体験価値がバージョンアップされる、サブスクリプションサービスならではの設計がされている。DXによって、予約のしやすさや、キャンセル、振替のしやすさが高まることは、顧客にとっても、フィットネスを習慣化するうえで重要な要素ではあるものの、フィットネス事業の成功の鍵は、人と人とのダイレクトなコミュニケーションの中で創出される、フィットネスサービスの本質的な体験価値が握っている。

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