掲載日:2021年10月25日  更新:2021年10月29日

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健康二次被害防止のために、フィットネス指導者ができること

2021年3月1日、新型コロナウイルス感染防止に伴う外出自粛等による健康二次被害から国民を守る、「健康二次被害防止コンソーシアム」が設立された。
フィットネス指導者として、この「健康二次被害防止」について、今後どんな取り組みができるのか。ここでは、まず「健康二次被害防止コンソーシアム」における取り組みを紹介する。

健康二次被害防止コンソーシアム 代表発起人 久野 譜也 先生

健康二次被害とは

コロナ禍による外出自粛と運動不足により、今後「健康二次被害」が拡大することに警鐘を鳴らす専門家が増えている。この新たな健康被害を防止するべく2021年3月に発足した「健康二次被害防止コンソーシアム」の設立趣旨には、以下のように書かれている。 

2020年からのコロナ禍により、多くの国民が自粛を余儀なくされ、自粛生活により著しく活動量や社会参加が低下し(特に高齢者)、それに伴う健康二次被害(基礎疾患の悪化、認知機能の低下、フレイルの進行など)が顕在化しています。
政府や自治体もこの点を理解しながらも、ともすれば感染予防にかかりきりになってしまいがちであり、また国民の多くはその危険度を認識するには至っていないのが現状です。
そこで、本コンソーシアムでは、産官学が協働してこの課題を解決するための取り組みの具体化を、スピード感を持って対応し、極端な自粛による健康二次被害の防止の必要性とその具体化を啓発することにより、国民が適切な感染症対策を実施したうえで、しあわせにつながる日常生活(外出・旅行・運動・消費・人とのつながりの維持などを送れるよう、啓蒙活動を進めていきたいと思います。
なお、本活動はSDGsや健幸都市推進の取り組みと位置づけ、それぞれが持つ特徴的なリソースを用いた社会への貢献活動と位置づけます。

運動していない高齢者への アプローチが鍵を握る

同コンソーシアムでは、最も健康二次被害の影響を受けやすい「運動していない高齢者」を守るべく、エビデンスに基づいた確かな情報をまとめたリーフレットを作成して、多面的に啓発活動をスタートしている。

個人単位では、SNSやブログなどを通じた情報発信を進めており、多くのオリンピアンにインフルエンサーに就任してもらい、話題性を高めてマスコミ報道に繋げている。

企業単位では、顧客へのリーフレット配布や、「健康二次被害防止」をテーマにしたイベントの実施、サービス開発が行われている。
例えば、株式会社明治では、牛乳を配達する際に、リーフレットを添えて各家庭に届けたり、第一生命保険株式会社では、セールスレディがチラシを持って、お客さま一人ひとりに丁寧に情報を届けている。ドラッグストアなどでも、高齢者が手にとりそうな商品の近くにリーフレットを置くなどして、運動していない高齢者との接点を活かしながら、啓発活動が進められている。

自治体の取り組みで特徴的なのが、ワクチン接種会場での待機時間を使っての、チラシ配布やミニセミナーの開催など。これまでに高齢者のワクチン接種率は80%を超えており、運動に関心がない人、地域との交流を持たない人にもアプローチする機会を得てきている。

こうした取り組みにより、コンソーシアム発足から約半年で、既に1,500万人に情報が届けられたという。

フィットネス指導者にできること

健康二次被害防止を啓発するリーフレットでは、コロナに負けない身体づくりとして、「正しい感染予防」と「自然免疫を高める」ことの重要性が、信頼できる調査研究によるエビデンスとともに分かりやすく整理されている。

「正しい感染予防」は、「マスク」「手洗い」「3密を避ける」を基本原則として明記するものの、「外出自粛」や「ステイホーム」の文字はない。
「自然免疫を高める」ための行動として、「適度な運動」「正しい食事」「質の高い睡眠」「人とのかかわり」が挙げられている。
 
同コンソーシアムの事務局が置かれている株式会社カーブスジャパン常務執行役員の齋藤光さんは、この中でも、特に「運動」と「人とのかかわり」が重要として、今後のフィットネスクラブの役割について、こう話している。

「『適度な運動』については、リーフレットにも『自分に合った正しい運動を教えてもらえる、インストラクターのいる運動施設を活用するのもおすすめです』と書かれています。まさにフィットネスクラブやインストラクターとして、健康二次被害防止に直接的に関われる部分です。また、フィットネスクラブやサークルは、人が集まって、インストラクターや参加者同士のかかわりが生まれるので、健康二次被害予防にとっては一石二鳥の場所と言えます。コロナ禍で、クラブやサークルを休会している方、退会してしまった方との接点が残っていれば、このリーフレットなどを活用して、適切な情報を、ご本人や家族、地域に届けていきましょう。
クラブやサークルで感染予防を徹底していることも発信して、高齢者や周辺の方々の不安な気持ちに寄り添いつつも、運動や人とのかかわりが免疫力を高めることを、フィットネスの専門家として自信を持って伝え続けていきましょう。いつでもフィットネスに戻ってこれる場を提供し続けることで、健康二次被害防止に大きな役割が果たせるはずです」

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