掲載日:2021年06月25日  更新:2021年10月07日

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NEXT AWARD トレーナー・インストラクター オブ・ザ・イヤー 2014

フィットネス・トレーニング指導者の活動範囲を広げ、広く業界と社会に貢献する活動を称えるネクストアワード『トレーナー・インストラクター・オブ・ザ・イヤー』2014の受賞者が決定!
フィットネス・トレーニング分野で高い価値を生み出している各受賞者の活動内容を紹介する。

健康でいることの大切さ

現在では、スタジオには子どもからお年寄りまで、地域の人々の笑顔が溢れる。だが、城下町の由緒正しい土地での商売を軌道に乗せるまでには果てしない努力があった。

「お金がなかったので、物件の保証料もオーナーさんに交渉して1年後に半分を後払いする了承を得たものの、1年経っても赤字が続いていました。ただ、オープン時たった一人だったお客様の和が確実に広がってきていたことで、自分の信念を大切にビジネスを育てることができました。私は独立する以前の仕事で、理念があっても経済的に不安定だったことで身体をこわし、その後、経済的安定を手に入れたものの人間関係のストレスで心を病む経験をしました。その経験から、いくら素晴らしい理念を掲げて価値ある仕事をしても、自分が心身ともに健康でなければ目的を達成することはできないと痛感したんです。だから、難しい状況の中でもまず自分が健康でいること。そして、家族、スタッフ、お客さまの健康も、自分ごととして大切にしています。そのうえで、社会、国家、世界へと、一歩一歩規模を広げていきたいと思っています。社名の『グローバルヘルスプロモーション』には『世界中のすべての人が心豊かに幸せに生きること』への思いを込めていますが、今は愚直に、その礎づくりをしています」

山村さんは7人家族。男4女1の、5人の子どもたちに存分に愛情を注ぐお父さんだ。忙しい仕事の中でも、布おむつの手洗いから、キャンプや旅行、サッカーの試合の応援にも行く。奥様にも、結婚記念日と誕生日には必ず2人で食事に行き、一人の女性として輝く時間をプレゼントする。お互いを大切に思うことが元気と健康のもとだ。

人材育成については、徹底して人間力と専門力を高められる環境をつくっている。「個を良くするのではなく、全体を良くすることで、そこにいれば自然にみんなが良くなる」環境づくりを進めていると話す。ここでもスタッフ自身はもちろん、スタッフの家族もが、心も身体も健康でいられることを目指している。

いくつかユニークな取り組みを挙げると、例えば朝礼。毎朝全店舗のスタッフ全員が集合して15分間で行われる朝礼では、瞑想から始まり、挨拶訓練、社訓唱和、ナンバーワン宣言、今日の行動指針、感謝したい社員、お客様自慢、ハッピートークなど、志を一つにして、前向きに具体的に取り組むことをお互いに宣言する。円陣を組んでスタートする1日は、最高のチームワークと生産性が発揮されることになる。その他にも、「両親への手紙」「バーベキュー大会」「(田舎町の)お祭り参加」など、家族や地域に感謝の気持ちを伝えたり、楽しい時間を共有する機会を数多くつくっている。専門性に関しては、研修や勉強会はもちろん、「夢ミーティング」「ビジョンモチベーション」など、スタッフ自身の目標や仕事の目的を確認する場を設けることで、自主的に自身を高められるようにしている。一人ひとりが常に自分に何ができるかを考え、それを実行に移す習慣をつけることで、お客さまへ、地域へと本質なサービスが提供できることになる。

こうした社内環境も、試行錯誤を経て今の形になったと山村さんは振り返るが、スタッフたちは、「会社に来るのが本当に楽しい」と定着率も高く、強いチームの基盤が確実にできている。

日本の和の精神を、世界に

山村さんの将来の夢は大きい。「動物も自然も宇宙も人間も愛に包まれ、本当の意味で、国家間や人種間に境界線がない状態を実現すること」。日本の和の精神や大和魂を持ち、フィットネスを手段として実現していくことを目指す。それを、同社の行動指針にもある
「Think globally, Act locally, Play full Fun」に沿って具体的に行動している。実際に、山村さんのトレーニング指導も会社経営も、大きな愛をフィットネスという手段を通じて伝えようとしていることが分かる。お客さまやスタッフ一人ひとりのありのままを認め、感謝し、自信を惹き出して、つながりを増やす。そのアプローチが、確実に和を広げてきているのだ。

社名にもあるとおり、会社設立当初から世界に目を向けたのは、幼少期から世界の様々な人と触れ合う機会を両親が与えてくれたからだと話す。社会福祉の仕事をする父と、保育士の母のもとで育てられ、家にはホームステイする外国人が出入りした。小学5年生でバングラデシュを訪れた時には、ストリートチルドレンとされる同年代の子どもたちと寝食を共にした。国境も貧富の差も超えて、誰もが健康を享受し、笑顔でいられる世界の大切さは、子ども心に刻み込まれたこと。一人ひとりの課題を解決しながら、そこに近づくことが、育ててくれた両親や先祖への恩返しと、強くしなやかな心で未来を見つめる。

直近では2015年に、下関にリハビリトレーニングや、「脳」や「動作」を鍛えるメディカルコンセプトのジムと、2020年のオリンピックを見据えたジュニアアスリートのパフォーマンス向上に特化したジムをオープンすることを計画。あと数年は下関で、各マーケットに特化したビジネスモデルを構築しながら課題解決力や環境対応力を高めていく。その経験と実績を持って、日本へ、海外へとその和を広げていく計画だ。

高齢化、過疎化をはじめ、課題を多く抱える下関で、強いチームをつくりながら着実に歩を進めるトレーナー山村勇介さん。下関でまた一つ、時代が動き始める。

山村勇介さん Yusuke Yamamura
1982年2月、山口県豊北町生まれ。スポーツ選手からリハビリ患者まで延べ2万人以上の運動指導を行う。09年会社設立。11年フィットネススタジオ「サンテココア」開設。13年に女性専門コンディショニングサロン、14年にパーソナルコンディショニングジムを開設。機能改善専門デイサービスや子どもスポーツクラブなど健康事業を展開。その他、専門学校・病院・刑務所など各種医療・教育機関で講師を務め、メディア・執筆も多数。講演依頼は400回を超える。また、5児の父として子育て奮闘中。ACSM公認ヘルスフィットネススペシャリスト、NASM公認パフォーマンスエンハンスメントスペシャリスト、NSCA公認パーソナルトレーナー、JCCA認定マスタートレーナー、健康運動指導士等

受賞理由
過疎が進む城下町という、商売を成長させるには二重も三重もの逆風が吹いている地で、着実に実績を積み、ビジネスを成長させてきていることが高く評価された。また、スタッフ育成についても具体的施策がなされており、今後事業が大きくなっても強いチームが創り続けられる仕組みが構築されつつある。将来の夢に向けて戦略的・具体的に取り組んでいる。



MUST ITEM!
創業当時、長男が父の日にプレゼントしてくれた絵。会社のデスク前に飾り、毎朝朝礼後にこの絵を見ている。多くの方の応援と支えに感謝の気持ち、初心忘れず

写真
①専門家向けの研修講師に留まらず津々浦々、業界外からも講演依頼多数

②毎年出場している地元の市民マラソン。海や山での自然遊び、キャンプなど、家族の時間を大切に過ごす

山村さんのこれまでの仕事人生グラフ

インストラクター部門 最優秀賞 高橋亜紀さん(39歳) P.A style代表 神奈川県体力づくり体操連盟理事

子どもを出産後、地域の健康体操指導からキャリアをスタートさせた高橋亜紀さん。アルバイトからフリーに、教育トレーナーへと活動の幅を広げ、そこで出会う人との縁で、フィットネスクラブを超えた新たな場での活動にも繋げている。自身と家族の闘病経験も、活動の原動力になっている。

縁が縁をよび、つながりが広がる

2014年は「縁が縁をよび、多分野の多くの人とつながることができた」と振り返る高橋亜紀さん。高橋さんは地元鎌倉の健康体操教室から指導者としてのキャリアをスタートさせ、その後株式会社ルネサンスのパートナースタッフ、契約インストラクターを経て、現在は教育トレーナーとして活躍している。その傍ら、フリーインストラクターとして指導の幅を広げようと、これまでにリトモスやポルドブラ、ピラティス、パーソナルトレーナー、ひめトレ教育トレーナーとしての資格や経験も積み、フィットネスクラブの仕事と、クラブ以外の仕事を上手くバランスさせながら、活躍の場を広げてきている。特に教育トレーナーになったことをきっかけに、出会う人や関わる世界がぐんと広がったと話す。

「特にシナプソロジーの養成講座では、様々な業種業界の方が受講に来てくださいます。介護関係や教育関係の方、子ども向け英語教室や塾の先生、チームビルディングやメンタルトレーニングの研究や講師をしている方々など、これまで自分が関わりのなかった方々とも数多く知り合うことができました。違う分野の方とつながることで、化学反応のように、意外な分野との繋がりも生まれました。例えば、音楽家の方とのトークイベント『音楽のちからとシナプソロジー』。“音楽は介護を救う”というコンセプトで活動されているフルーティストの、みつとみ俊郎さんとのコラボだったのですが、これまで運動にはなじみのなかった方々にも、シナプソロジーが紹介できたり、それをきっかけに、ひめトレやピラティスをはじめ、様々な運動の効果や楽しさを伝える機会に恵まれるようになりました」

「命」と「笑顔」の大切さ

縁を大切にするうちに、仕事の幅が広がる一方で、「地域の仕事は原点」と、鎌倉で自身が12年前に立ち上げたエアロビクスのサークルと、9年前にスタートした高齢者のサークルは何より大切にしている仕事。プライベートでは、6年生の女の子と2年生の男の子のママ。フィットネスクラブでの指導や教育トレーナーの仕事が増える中、地域の仕事と、育児、家事に至るまで、全力で関わるスーパーママインストラクターだ。

日中は車がオフィス兼自宅になる。地域の運動指導ではラジカセもエクササイズツールも自前。車に仕事道具を常備しながら、移動時間に車で食事。夕食の買い物や、子どもたちの送り迎えの合間を縫って、車で睡眠補給も。まさに、1分1秒も無駄にしない日々を送る。

高橋さんがそこまで頑張れるのにはいくつかの理由がある。まず仕事に打ち込む理由は、母の影響が大きいと話す。

「私の母は、地元の鎌倉を中心に神奈川県生涯スポーツリーダーとして活動していて、今も現役です。指導歴は35年になります。これまで幾度となく『この仕事は自分だけでなく周りの人も健康にする、素晴らしい仕事よ』と言われ続けてきているので、この仕事の価値が私の身体にも沁みついているんだと思います。指導に携わるようになったのも、母のアシスタントの仕事がきっかけ。その後、民間クラブの仕事を始めることになったのも、母が切り抜いてとっておいてくれたルネサンスの求人広告がきっかけなんです」

地域の運動指導経験を持っていた高橋さんは、その後フィットネスクラブでの指導でもトントン拍子で実績を上げ、仕事の場を広げていくことになる。母から言われてきた「運動指導者の仕事」が、「自分の仕事」として向き合えるようになってきた矢先に、その気持ちを強めることになる出来事が重なった。

ひとつは自身の乳がんが発覚したこと。そしてもう一つが、ほぼ時を同じくして父がすい臓がんを患い、余命13ヶ月を宣告されたことである。幸い自身の乳がんは、できる治療をすべて行い、術後5年を経て小康状態を保つに至っている。父は、その後3年間命をつなぎ、高橋さんも家族も「できる限りの孝行ができた」と感じる中、見送ることができた。その経験を通じて、2つの思いが心に残っていると話す。

「一つは、自分がインストラクターの仕事を通じて伝えたいと思っているのは『命』だということです。父の死へのカウントダウンが始まってから『死』と向き合う時間が長く、今の時間を大切にしたいという思いばかりが募っていました。父が逝った後も、自分の乳がんがいつ再発するか分からない恐怖感から『死』にばかり目が向いていたのですが、ある時、『高橋さんが伝えたいのは命なんだね』と言われて、ハッと気づいたんです。確かにインストラクターの仕事を通じて感じていたかったのは、1分1秒をわくわく過ごしたい。そこで『生きること』『命の大切さ』を伝えようとしていたんだと気づくことができたんです」

そして、高橋さんが壮絶な経験の中で心に刻んだもう一つのことは、「笑うことの大切さ」。

高橋さんは、地域の仕事を何より大切にしていることから、自身の闘病、父の介護を続けながらも、レッスンを休むことはなかった。レッスンに行けば、つくり笑いもする。その後シナプソロジーの仕事に携わるようになってからは、それをするだけで参加者の方から自然に笑顔がこぼれ、それにつられて自分も笑顔になる。どんなに辛く過酷な環境でも、つくり笑いでも続けることで心が救われ、次第に自然に笑えるようになることを経験した。「最近は、バカ笑いもできるようになりました」と、はにかむ高橋さんは笑顔の有難さを誰より知る一人。だからこそ、今では指導でも、日常でも笑顔を欠かさない。笑顔が自分をも強く支えてくれるから。

夢を持って、学び続ける

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