掲載日:2021年08月08日  更新:2021年10月07日

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NEXT AWARD トレーナー・インストラクター オブ・ザ・イヤー 2016

フィットネス・トレーニング指導者の活動範囲を広げ、広く業界と社会に貢献する活動を称えるネクストアワード『トレーナー・インストラクター・オブ・ザ・イヤー』2016の受賞者が決定!フィットネス・トレーニング分野で高い価値を生み出している各受賞者の活動内容を紹介する。

③ビジネスコンテスト優勝の時の写真

原田さんのこれまでの仕事人生グラフ

インストラクター部門 最優秀賞 坪井啓子さん 有限会社アクアブルーオヴティ 取締役

坪井啓子さんは、2017年に還暦を迎える。数々の病気やケガを克服し、現在も週14本のレギュラーレッスンを担当する現役インストラクターである。それも、インストラクター業の中でも身体への負担が多いとされるアクアプログラムのインストラクターだ。現場のお客さまから学べることをモチベーションに、近年はアイチダンスの提供と改良を続けている。

心不全から2ヶ月で復帰

2016年4月、坪井啓子さんは身体の変調を感じて病院を訪れると、心拍数は33拍/分に低下していた。「もはやご自身の心臓では生きられません」と宣告され即入院。2日後には、心臓にペースメーカーを入れる大手術となった。59歳で、インストラクターとしていつ現場に戻れるか分からない状況に、周辺では「インストラクター引退」も囁かれていたという。だが実際は、たったの2ヶ月で復帰を果たし、復帰にも全く躊躇はなかったと坪井さんは振り返る。

「ここ数年、春の訪れを感じる季節に、毎年大きな病気やケガが連続しているんです。2年前は転倒による手首と仙骨の骨折、昨年は、風邪をこじらせ副鼻腔炎と中耳炎の合併症になり、耳の鼓膜を切って膿みを出しました。今回は、加齢により心筋が弱ったことが原因です。元々スポーツ心臓で心拍数は低めだったのですが、3年前に40拍を下回るようになり。『35拍を切ったら危ない』と当時から言われていたのですが、その日が来たという感じ。それでも毎年5月のフィットネスセッション講師までに復帰できてきたので、今回も同じ感覚でリハビリに取り組み、フィットネスセッションには間に合わなかったものの、早い復帰ができました」

坪井さんは退院後すぐに、「これを治せるのは、水しかない」と、通いなれたプールに向かった。長年にわたり提供してきたアクアプログラムのアイチや、水中エクササイズのハイドロトーンで一つひとつの動きを確認するようにリハビリに取り組んだ。もともと機能改善エクササイズとして追求してきたプログラムだったが、自身の体験を通じて、その価値と効果を自ら再確認することになる。

坪井さんはこれまでにも幾度と病気やケガを乗り越えてきているが、そのたびにアクアプログラムのお客さまとの関係が近くなると話す。年を重ねれば誰でも身体の痛みや違和感が増える。自分がケガや病気から復帰することで、お客さまは「先生も痛いところがあるなら、自分たちも痛いところがあってもガンバる」「お互いさまだね」と親近感を抱くのだ。お互いに「〇〇だよねー」と共有できることが増えることで、お客さまとの距離が近づき、リアルなコミュニケーションが生まれる。お客さまとのコミュニケーションが増えることで、お客様への理解も深まる。今回の現場復帰も、「現場で共有できることが増えて、もっとレッスンが楽しくなる」という気持ちが原動力になっていた。

参加者と開発するアイチダンス

坪井さんがインストラクターとして、長く情熱を燃やし続けられる理由のひとつに、水中ファンクショナルトレーニングとして知られるアクアプログラム、アイチとの出会いがある。

アイチは、今から22年前、株式会社アクアダイナミックス研究所代表の今野純さんが開発したプログラム。水中で太極拳のようにゆっくり動くことで、身体の経絡を刺激していく。特に、「鎖骨」「肩甲骨」「仙骨」回りにアプローチし、姿勢調整に関係が深い13の経絡に着目したの19シンプルな動きで構成されている。これまでに世界18カ国に導入され、世界4大アクアセラピーメソッドとして特に欧米で高い評価を受けている。近年、関節の機能向上や、治癒力が高まることについてのエビデンスが増えており、理学療法やスパなどの自然療養地などでの導入が進んでいる。

坪井さんは、この約20分で行える基本のアイチルーティンに、指導現場での声を反映した動きの要素を加えるとともに、フィットネスクラブでも導入しやすい30分、45分、60分の設定での「アイチダンス」を開発。5年前にリリースした。現在担当しているレギュラーレッスンの中でも「アイチダンス」の集客が一番安定しているという。坪井さんはその魅力をこう説明する。

「私が特にいいなと思うのは、水中で関節を冷やしながら動かせること。そして水の浮力で無重力状態の中で身体を動かせること。この環境は、プールのほかには、月に行くか大学病院の研究室くらいしかない貴重なものなのです。ただその一方で、ゆっくりとした動きなので、寒さを感じてしまったり、楽しさや達成感が得られなかったり。実際にアイチダンスを導入した1年目は、それまでアクアダンスで60名以上集客していたクラスが、冬には17名まで減ってしまい。さすがに『あと1年やって集客が戻らなかったらやめます』と約束して、現場の声をひたすら聴き、反映していきました。今野さんが構築した本質は変えず、参加者の方々と一緒にプログラムを開発していく感覚です。ちょうどその頃、母が80歳を前に介護になりかけ、母にもアイチを勧めたのですが『もう、できない』と。このときに、『80歳で必要になる運動は、80歳から始めたのでは遅い。80歳になっても続けられるプログラムを中高年層からスタートできるようにする』ということも同時に決意したことを覚えています」

インストラクターは全うする職業

坪井さんは、還暦を迎える2017年からは、これまで60年間経験してきたことを基盤に、指導者としてさらに活動を拡げようとしている。具体的には、進化を続けるアイチダンスを毎年プレコリオプログラムとして形に残しながら、さまざまなパターンでのアイチダンスをつくり続けることを目指している。現在アイチダンスのインストラクターは世界に数人。その一人ひとりが、現場で新しい答えを見つけ、プログラムに反映して、さらなる進化を遂げられるように。アイチダンスは永遠に完成しないプログラムなのだ。

「私自身、29歳で水泳のコーチからマタニティアクアを担当することをきっかけにインストラクターになりましたが、30代の頃は、50代のインストラクターには早く辞めて欲しいと思っていました。情報は新しくなるのに、ずっと君臨しているように見えたから。その自分が60代を迎えて、改めてインストラクターは辞められないと感じています。私もアクアインストラクターとして、膝も痛めましたし、脱水症状に何度もなった。でも、なった人しか分からないこと、考えられないことがある。そして、同じプログラムを提供していても、いつも違う答えが現場にはあって、この『答え』に『応える力』は現場でこそつけられる。私は参加者の方々に、『運動は死ぬ前日まで』と伝えていますが、それをサポートするためにも、私自身がインストラクターとして人生を全うしたいし、それをするに値する職業だと思います。還暦になっても、故障が続いても、現場でのコミュニケーションが、それを価値に変えてくれる。それが何より私にエネルギーを与えてくれるのです」

坪井啓子さん Keiko Tsuboi
有限会社アクアブルーオヴティ 取締役
29歳で水泳コーチからマタニティアクアを担当したことをきっかけにインストラクターに。見よう見まねで導入したアクアエクササイズが人気となり、アクアプログラムの基本を学ぼうと、33歳でアクアダイナミックス研究所の門をたたく。37歳よりチェーン店全店のアクアインストラクター育成に携わり、以来アクティブなアクアプログラムから調整系アクアプログラムまでの幅広い開発を同時に続けながら現場指導を続けてきている。


受賞理由
インストラクターとしての現場経験を、プログラム開発に活かし、アクアエクササイズを進化させてきている。還暦を目の前にした大手術後、アクアエクササイズでリハビリを続け、短期間で見事に復帰。自身が伝えるアクアエクササイズの価値と効果を実証し、今後のさらなる開発や指導に繋げようとする姿勢と実績が高く評価された。


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カラダは食から成る。朝のリンゴ、マヌカハニー、ローストしていない生ナッツは必須ルーティン!

写真
①シワ・シミ・シラガ・ペースメーカーは私の歴史と誇り

②骨折のリハビリで確信したハイドロトーンの効果。自らのトレーニングには欠かせません

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