掲載日:2021年08月15日  更新:2021年10月07日

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就職希望者必読フィットネス業界を徹底分析!
Club Business Japan

Future 現状から読み解フィットネス業界「7つの予想」

現状・トレンド・キャリアパスを一挙にまとめた。
「フィットネス業界に就職って実際どうなの?」の疑問解消!

市場規模拡大のカギはマーケティングと新人材

2006年度から業績に陰りが見え始めたフィットネス業界。

10年に入ってから回復基調を取り始めたが、11年3月の東日本大震災で再び業界はダメージを受ける。11年後半から再び回復基調となり、そこからぐんぐんと成長軌道に乗っていった。市場規模は14年、15年、16年、17年、18年とさらに伸び19年は4,939億円と市場最高値を記録している。参加率も4.4%となった。

フィットネス業界の市場規模はコロナ禍で一時的に縮小したが、中長期的には成長が期待できる。ただし、早期に業績を回復させ大きく成長していくためには、より顧客志向のマーケティングやオペレーションの標準化、人材育成などを徹底するとともに、これまでとは異なる事業モデルやスキームにも挑戦してイノベーションを起こすことが求められる。

事業モデルの転換、コンセプトの明確化、新たな集客手法の確立、客単価アップにつながるサービスの開発、AIなどのデジタルテクノロジーの活用といったことに果敢に取り組んでいかなければならない。そして、今以上に生産性を引き上げなければならない。

そういう意味では、これからこの業界に飛び込んでくる若い人材が活躍する可能性は非常に高い。そこでは健康・スポーツ分野を専門としてきていない人材も活躍できる可能性が広がっている。

フィットネス市場がぐんぐん伸びている今、健康の維持、増進に興味をもった人々がフィットネスに取り込み始めるようにするためのサービスはまだまだ開発の余地が十分に残っている。

だが、今後は優勝劣敗の構図がより鮮明になる。フィットネスクラブは不動産ビジネスであり、エリアマーケットでもあり、またピープルビジネスでもあるといったようにさまざまな複合的な事業特性をもつことを理解し、顧客視点から考え、市場創造、顧客創造を実現できる企業が生き残るはずだ。

このようなフィットネス業界を取り巻く状況の中、これから起こるだろう業界の変化と、それに伴い求められる人材の要件を予想した。次ページから始まる7つの変化のカギを握るのはこれからフィットネス業界に入るあなたかもしれない。

フィットネス市場規模の推移(単位:億円、%)

*『特定サービス産業動態統計月報』(経産省)のデータを基にフィットネスビジネス編集部が推定。
*上記売上高にはスイミング単体施設のそれ(およそ600億円)は含まない。クラブ内のスクール会員(成人・子ども)は含む。若干ではあるがボクシングジムなどの売上高も含まれている。
*フィットネスクラブ業務に関わる「その他の収入」も含まれている。

2011年度上期までのダウントレンドから一転フィットネス業界は成長が続く

会員数・延べ利用者数の推移

*『特定サービス産業動態統計月報』(経産省)のデータを基にフィットネスビジネス編集部が推定。参加率算出に用いた総人口は総務省統計局発表の各年10月の推定人口。
*会員数には、フィットネスクラブに所属するスクール生も含む。

ここ数年会員数が上昇。人々の暮らしにフィットネスが浸透してきているということか。

Futuer1 12年以降に増加傾向フィットネスが日常生活の一部に

フィットネスクラブ新規開業施設数の推移(単位:軒)

*継承施設、移転新設施設を除く
*2020年406軒の業態別内訳は、小規模サーキットジム11軒、ジム型314軒、スタジオ型28軒、ジム・スタジオ型32軒、総合型21軒
*2019年381軒の業態別内訳は、小規模サーキットジム66軒、ジム型224軒、スタジオ型51軒、ジム・スタジオ型23軒、総合型17軒
*2018年533軒の業態別内訳は、小規模サーキットジム91軒、ジム型301軒、スタジオ型77軒、ジム・スタジオ型32軒、総合型32軒
*2017年378軒の業態別内訳は、小規模サーキットジム106軒、ジム型197軒、スタジオ型38軒、ジム・スタジオ型23軒、総合型14軒
*2016年300軒の業態別内訳は、小規模サーキットジム112軒、ジム・スタジオ/単一アイテム施設181軒、一般的なフィットネスクラブ7軒
*2015年300軒の業態別内訳は、小規模サーキットジム130軒、ジム・スタジオ/単一アイテム施設161軒、一般的なフィットネスクラブ9軒
*2014年223軒の業態別内訳は、小規模サーキットジム153軒、ジム・スタジオ/単一アイテム施設56軒、一般的なフィットネスクラブ14軒
*2013年227軒の業態別内訳は、小規模サーキットジム144軒、ジム・スタジオ/単一アイテム施設53軒、一般的なフィットネスクラブ15軒
*2012年212軒の業態別内訳は、小規模サーキットジム156軒、ジム・スタジオ/単一アイテム施設36軒、一般的なフィットネスクラブ20軒
*フィットネスビジネス編集部調べ

フィットネス業界は、中長期的には大きく成長するだろう。業界内外のプレイヤーが各々に工夫と努力をすることによって、多くの生活者がそれぞれにフィットネスの価値を理解し、それを70日00常生活の中に組み入れようとするはずだ。今はまだフィットネスの必要性に目覚めていない生活者・勤労者もイノベイティブな業態や商品・サービスが登場することでフィットネスをするようになる。

これまでの歴史を振り返ると、クラブのクオリティが次第に高まるなかで、経営環境の変化から一時的に調整局面を迎えることもあったが、ロングレンジでは確実に成長してきている。

海外に目を転じてみても、欧米の多くの先進国はほぼすべて右肩上がりで成長してきている。変革期に対応できるイノベイティブでベンチャー精神旺盛な人材が登場し次代を切り開いているのだ。日本も今、そういう人材の登場が待たれる。

Future2 “個客”ニーズを捉え新業態・新サービスの誕生と発展

既存の総合クラブのマーケティングが効かなくなってきている。多様化する顧客のフィットネスニーズや購買行動に対応しきれていないからだ。これからは顧客本人も気づいていないような“個客”の真のニーズを捉えた業態・サービスの開発や運営手法の構築、成熟化時代に対応した集客手法への取り組みなどが求められる。

総合クラブ業態は、決して廃れることはないだろうが、工夫と努力を怠る総合クラブは、台頭する女性専用小規模サーキットジムや24時間営業のセルフ利用型ジム単体施設、各種目的志向の単体スタジオ、マイクロジム、ボディメイクジムなどの新業態に脅かされるだろう。

自らの商圏で生き残り成長していくためには、新業態や新サービスを開発することが必要になろう。不況期でも強いスクール系の商品・サービスも改めて見直されるだろう。アスレティック塾のような新しいスクール種目や学童サービスなどももっと開発されるはずだ。

Future3 地方・郊外への出店が加速

これまでは数億円規模の初期投資が必要な総合クラブ業態が主流であった。この業態はマーケットパワーの弱い地方郊外では、コストを吸収することができないため出店が少なかった。

ところが、女性専用小規模サーキットジムやホットヨガスタジオ、コンンパクトプール、ビギナー向けの中規模総合クラブなど低投資・低運営コスト・低料金の業態などが地方郊外に出店し、成立することがわかりはじめると、人口の少ないマーケットに相応の業態で出店を狙う企業が増え始めた。

全国レベルでみると、そうした小規模業態が出店する余地はまだある。クラブの参加率は所得水準と相関が高いがこれまで集客力が高かった首都圏・中京圏・近畿圏などのオフィス立地はコロナ禍で流動人口が減少しているため、今後はそうしたエリアのオフィスに勤務していたワーカーが住む郊外エリアへの出店が増えるだろう。また、今後は地方郊外においても相応の業態で出店する企業が増えていくだろう。商圏は間違いなく小商圏化していくのでそれに対応した業態が求められる。

2020年新設クラブ数 ブランド別内訳(単位:軒)